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大作映画「MERCY マーシー AI裁判」から考える、AIはどこまで人の代わりになるのか?【コラム/細野真宏の試写室日記】

2026年1月24日 06:00

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映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。

また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。

更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)


1月23日(金)から「MERCY マーシー AI裁判」が公開されました。

ChatGPT、GeminiなどのAIがスマホを介して物凄い勢いで浸透している現在。

最近驚くのは、日常の様々な相談事などをAIに頼っていて、もはや人よりもAIの判断を信頼している人が若者層を中心に増えてきている現象です。

この事例が象徴するようにAIの台頭が著しい社会になってきていますが、この映画では近未来で「AIが司法を担う」というところまでを描いています。

一見すると絵空事のようにも思えますが、この映画の着想は個人的には、とても理解できます。

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それは主に現状の裁判においては、根本的な2つの大きな構造的な問題があるからです。

1つ目は、裁判官の人数の問題があり、判決が出るのに時間が長くなってしまうこと。

2つ目は、裁判官の能力によって判決が大きくバラつくこと。

個人的には、特に2つ目の裁判官の能力問題は極めて深刻だと考えていて、同じ証拠から導き出される結論が全く異なることも散見されるのです。

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これはわかりやすく言うと「裁判長の資質や能力の問題」が最も大きな要因で、どこまで個別の証拠を的確に見落とさずに考えることができるのかによって判決が全く異なってしまうわけです。

つまり、裁判では「担当する裁判官の当たり、はずれがある」ような現実が存在します。

このような現実を踏まえると、本作のように、AIが司法を担って裁判をして判決を出すという仕組みは決して荒唐無稽な話ではないと思えます。

まず本作の設定で面白いのは、AI裁判所である「マーシー裁判所」では「90分で判決を出す」ということです。

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これはまさに1つ目の長時間の問題を解消する話で、理想的な印象があります。

ただ、いくらAIの情報処理が速いとはいえ、さすがに90分で全てが決まってしまうのは、やや映画的な設定なのかもしれません。

もちろん、非現実的とも言い切れないのは、情報化社会に合わせて、このAI裁判所においては、AIが膨大に持っている世界中のデータベースから新たな証拠を集めることが可能で、90分という時間を最大限に活用して、容疑者はAIの協力の下、それらのデータベースを検索したり、電話などで外部とのやりとりが自由にできるのです。

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ここで、「本作にリアリティーを与える重要な映画」が存在していて、その典型とも言える作品が名作「Search サーチ」(2018年)です。

すべての物語がPC上で完結するという画期的な作品で、ネットワークが張り巡らされている情報化社会の現状と、映画の新たな可能性を広げることに成功しました。

本作の監督は、まさに「Search サーチ」をプロデュースしたティムール・ベクマンベトフ監督なのです。

ティムール・ベクマンベトフ監督は、元々は「ナイト・ウォッチ」というロシアで大ヒットしたロシア映画で有名になり、アンジェリーナ・ジョリー×ジェームズ・マカヴォイによるアクション映画「ウォンテッド」(2008年)でハリウッドデビューして「アクション映画」でも定評があります。

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実は、本作には「アクション映画」的な要素もあるのです。

本作では、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」「ジュラシック・ワールド」シリーズでも主演を務めたクリス・プラットが敏腕刑事の主人公レイヴンを演じています。

そして、表情を変えないAI裁判官のマドックスを「ミッション:インポッシブル」シリーズで有名なレベッカ・ファーガソンが演じています。

主人公のレイヴンは目を覚ますとAI裁判所「マーシー裁判所」に拘束されていて、もしも自身にかけられた「妻殺し」の容疑を晴らすことができなければ90分後には「死刑」という状況下に置かれます。

しかも、状況証拠からは、誰が見ても「妻殺し」を行なったのはレイヴン自身のように思えます。

果たして、誰が見ても「正しそうに思える状況証拠」を覆すことは可能なのでしょうか?

Dolby Cinemaアート
Dolby Cinemaアート

ちなみに、誰が見ても「正しそうに思える状況証拠」を覆すことを描いた映画には、綾野剛主演「でっちあげ 殺人教師と呼ばれた男」(2025年)という実話がありましたが、現実社会では裁判において完全に容疑が晴れるまでに10年間の月日がかかっています。

AIは今後、様々な業種で人の代わりを担っていくことになるのは間違いないとは思いますが、現時点でのAIは「間違えてばっかり」というイメージを個人的には持っています。

というのも、たまにAIで検索してみるのですが、情報に誤りが散見され、「これは危ないな」と感じるからです。

IMAXエクスクルーシブビジュアル
IMAXエクスクルーシブビジュアル

ただ、AIによる情報の確度も上がっていくでしょうし、それにつれて人よりも使えるという認識が進めば、一気にAIへの置き換えが進むことになりそうです。

本作では物語が進むと「AI裁判所」の課題が見えるようにもなっていて、そこも含めて「近未来を考える上で重要な作品の1つ」と言えるでしょう。

執筆者紹介

細野真宏 (ほその・まさひろ)

X(Twitter)

経済のニュースをわかりやすく解説した「経済のニュースがよくわかる本『日本経済編』」(小学館)が経済本で日本初のミリオンセラーとなり、ビジネス書のベストセラーランキングで「123週ベスト10入り」(日販調べ)を記録。

首相直轄の「社会保障国民会議」などの委員も務め、「『未納が増えると年金が破綻する』って誰が言った?」(扶桑社新書) はAmazon.co.jpの年間ベストセラーランキング新書部門1位を獲得。映画と興行収入の関係を解説した「『ONE PIECE』と『相棒』でわかる!細野真宏の世界一わかりやすい投資講座」(文春新書)など累計800万部突破。エンタメ業界に造詣も深く「年間300本以上の試写を見る」を10年以上続けている。

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Twitter:@masahi_hosono


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