映画.comでできることを探す
作品を探す
映画館・スケジュールを探す
最新のニュースを見る
ランキングを見る
映画の知識を深める
映画レビューを見る
プレゼントに応募する
最新のアニメ情報をチェック

フォローして最新情報を受け取ろう

検索

「おくびょう鳥が歌うほうへ」あらすじ・概要・評論まとめ ~オークニーの小さな島で彼女が見つけた大切なこと~【おすすめの注目映画】

2026年1月8日 10:30

リンクをコピーしました。
「おくびょう鳥が歌うほうへ」
「おくびょう鳥が歌うほうへ」
(C)2024 The Outrun Film Ltd., WeydemannBros. Film GmbH, British Broadcasting Corporation and StudioCanal Film GmbH. All Rights Reserved.

近日公開または上映中の最新作の中から映画.com編集部が選りすぐった作品を、毎週3作品ご紹介!

本記事では、「おくびょう鳥が歌うほうへ」(2026年1月9日公開)の概要とあらすじ、評論をお届けします。


【「おくびょう鳥が歌うほうへ」あらすじ・概要】
画像2(C)2024 The Outrun Film Ltd., WeydemannBros. Film GmbH, British Broadcasting Corporation and StudioCanal Film GmbH. All Rights Reserved.

シアーシャ・ローナンが初プロデュースを手がけて自ら主演を務め、大都会で自分を見失った生物学者が故郷で新たな生き方を模索する姿を描いたドラマ。イギリスでベストセラーとなったエイミー・リプトロットのノンフィクション回想録「THE OUTRUN」を原作に、「システム・クラッシャー」でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞したドイツ出身のノラ・フィングシャイト監督が映画化。スコットランド・オークニー諸島の雄大な自然を背景に、主人公の断片的で混濁した内面世界を繊細な演出で描き出す。

ロンドンの大学院で生物学を学んでいた29歳のロナは、スコットランドの故郷に10年ぶりに帰ってくる。恋人との別離、暴力的な体験、入院など、人生が限界を迎えた末に、彼女は依存症の治療施設に入所し、90日間のリハビリプログラムを経て断酒生活を開始した。故郷の野鳥保護団体で働きながら孤独な時間を過ごすなかで、少しずつ自らの内面と対話を重ねていくロナだったが、数々のトラブルを引き起こしてきた記憶の断片が彼女を悩ませ続ける。

共演は「MEN 同じ顔の男たち」のパーパ・エッシードゥ、ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のスティーブン・ディレイン、「記憶探偵と鍵のかかった少女」のサスキア・リーブス


●オークニーの小さな島で彼女が見つけた大切なこと(筆者:髙橋直樹)
画像3(C)2024 The Outrun Film Ltd., WeydemannBros. Film GmbH, British Broadcasting Corporation and StudioCanal Film GmbH. All Rights Reserved.

浜辺を歩く少女が木片を波打ち際に投げ入れる。すると海中で揺れる海藻の狭間にアザラシが姿を現す。「波にのまれた人はアザラシになる。満潮の夜、アザラシは美しい人間の姿で現れ、月光の下で肌もあらわに踊る。夜明けには海へ帰るが、人間に見られると体は元に戻らなくなる。だが陸では幸せになれない。海こそが居場所だからだ」

冒頭でスコットランドのオークニー諸島に伝わる“セルキー”伝説を引用したノラ・フィングシャイト監督は、酒に飲まれた女性に起こった事の次第を語り始める。

右目の周りを紫色に腫らしたロナが質問に応じている。現在29歳。無職だがロンドンの大学院で生物学の修士号を取得している。家族には大きな病気を患った者はいない。でも「精神疾患のあるご家族は?」と問われると黙してしまう。

シアーシャ・ローナンが演じるロナは、スコットランドの荒波に浮かぶ小島の育ちだ。羊を飼う父は穏やかな人だが、吹き荒れる嵐のような狂気を内に宿している。ひと度風向きが変わると家財を破壊した。誰も止められない狂騒(双極性障害の発作)を前に母と幼い娘はただ立ちつくすことしかできない。

画像4(C)2024 The Outrun Film Ltd., WeydemannBros. Film GmbH, British Broadcasting Corporation and StudioCanal Film GmbH. All Rights Reserved.

この映画はアルコール依存症に苦しんだエイミー・リプトロットの実体験を記した回顧録「THE OUTRUN」を基にしている。原作者によると、実際に起こった出来事から「何を語るべきか」の取捨選択が重ねられ、リアルに伝えるためのフィクションを盛り込むきめ細やかな作業が約8年間続いた。ロナの造型にはプロデューサーも務めたローナンも加わり、現在進行形の今に、不意に湧き上がるブラックアウトした記憶の断片を重ね、複数の時制が交錯する脚本を仕上げた。

人はなぜ酒を飲むのか。生まれて初めて口にしたときの体の中に広がる違和感の記憶は、歳を重ねる度に薄まっていく。否、その記憶は深く脳に刻まれ、ふとした瞬間に全身に痺れをもたらす。だから人は酒を飲むのかも知れない。劇中、泥酔状態で「私は強い」と嘯くロナは、周囲を辟易させながら過度な痛飲を続ける。

故郷を離れて最高学府で学びながらも何ら有意義な「生の実感」が伴う自分の居場所を見つけられない。現実から目を逸らし、破壊衝動に身を任せるかのように酒をあおる。これ以上続けたらすべてが壊れてしまう。10年振りに故郷に帰った彼女は、90日間のリハビリを経て断酒生活を始める。

画像5(C)2024 The Outrun Film Ltd., WeydemannBros. Film GmbH, British Broadcasting Corporation and StudioCanal Film GmbH. All Rights Reserved.

オークニー諸島のパパイ島(パパ・ウェストレイ島)で、野鳥保護団体職員として希少種“ウズラクイナ”の鳴き声に耳を澄ませる作業を続ける。シアーシャ・ローナンは、厳しい自然に晒される小島で慎ましい生活の中で突然脳裏に甦る苦い記憶と向き合うノラの葛藤と発見の軌跡を見事に体現している。

これはちょっと遠回りした気づきの物語である。今なら分かる。父の苦しみも、神にすがるしかなかった母の気持ちも、酒に溺れた私を持て余すことしかできなかった恋人の苛立ちも。

ロンドンでの忌まわしい記憶とオークニーでの孤独な生活、そして新たな探求の旅へ。ノラ・フィングシャイト監督は、ふたつの場所にロナの意識の目覚めとなる“ナード・レイヤー”を加えた三層構造の想像力豊かな作品を通して、自分と向き合うことの大切さを教えてくれる。

執筆者紹介

髙橋直樹 (たかはし・なおき)

1962年生まれ。大阪芸大卒。
映画.com編集顧問、ティー・ベーシック代表。


シアーシャ・ローナン の関連作を観る


Amazonで関連商品を見る

関連ニュース

映画.com注目特集をチェック

関連コンテンツをチェック

おすすめ情報

映画ニュースアクセスランキング