奥山由之監督、アリ・アスター新作「エディントンへようこそ」の感想は?「映画館で見ながら初めて呼吸が苦しくなった」
2025年12月2日 16:00

アリ・アスター監督の最新作「エディントンへようこそ」のトークイベントが11⽉30日、東京・ユーロライブで開催され、アリ・アスター作品のファンで、映画「秒速5センチメートル」がヒット中の奥⼭由之監督が登壇した。
本作は、コロナ禍でロックダウンされた小さな町の選挙戦が全米を巻き込む大事件へと発展していく様子を描いたスリラー映画。本年度のカンヌ国際映画祭でコンペティション部⾨に招待された。主演を「ジョーカー」でアカデミー賞主演男優賞を受賞したホアキン・フェニックスが務め、前作「ボーはおそれている」に続くアスター監督と再びタッグを組んでいる。さらにペドロ・パスカル、エマ・ストーン、オースティン・バトラーらが共演した。
(C)2025 Joe Cross For Mayor Rights LLC. All Rights Reserved.10⽉に開催されたジャパンプレミアで⼀般の観客と共に本作を鑑賞したという奥⼭監督。本作は2020年を舞台にしているが「いままさに⾃分たちが置かれている状況と何の変わりもなく、過去のこととして⾒られなかった」と語る。
「コロナ禍やブラック・ライブス・マター(Black Lives Matter)といったことを通して、アメリカという国⾃体が精神的に混乱していく状況をそのまま提⽰してくる」と感じたと⾔い、また「“状況報告書”みたいな作品であり、(アリ・アスターが)ここまで社会というものを正⾯から描いたのが、ちょっと意外な感触」と述べる。
「(これまでのアスター監督は)<家族>や<カルト>など、⼩さな共同体の歪みを通してトラウマを描く作家だと思っていたんですが、今回は国家――エディントンというひとつの共同体、ひいてはアメリカという国⾃体も描いているのかも」と指摘。さらに「それが新鮮でもありながら、特定のイデオロギーを代弁するでもなく、フラットに右も左も、陰謀論もリベラルな偽善も全部、等価値に並べて、そういうものの滑稽さと同時に危うさみたいなものを⾒せてくるのが、アリ・アスターらしいなと思いました」と感想を語った。
アスター監督といえば、じわじわと精神を蝕むようなホラー表現が秀逸であることでも知られる。奥⼭監督⾃⾝は「怖いものがとにかく苦⼿で、昔はホラーは⾒られなかった(笑)」と明かす。だが、最初に⾒たアスター作品「ボーはおそれている」をきっかけに興味を持ち、過去作「へレディタリー 継承」や「ミッドサマー」へと遡って鑑賞したという。
そして、「ボーはおそれている」くらいから“物理的な怖さ”から“潜在的に⼈間が抱えている不安”へと恐怖の質が変わったことに⾔及。「ジャンル映画としてのホラーというより、感情を起点にして、いま、画に映っているものが『どこか変な気がする…』と⾒ている側が不安になり、それが笑いにも繋がるし、恐怖にも変化する」と説明。さらに「笑いと恐怖の混在みたいなもののバランスが、ここまで確⽴されている監督は珍しいと思う。そういう種類の恐怖の描き⽅は、みんなができることじゃない。超⾃然や幽霊といったことで驚かせることの“先”を⾏ったホラー作家であり、興味深いです」と評価した。
映画ファンはもちろん、特にクリエイターから絶⼤な⽀持を集めるアスター監督。奥⼭監督は「ボーはおそれている」について「⽬に⾒えているものの現実の質量と、頭の中での妄想が等価値になって、境⽬がシームレスで、どっちがどっちなのか混濁していく感覚は、創作をしている⼈にはあると思います。僕⾃⾝、⼩さい頃からそういう感覚はありました」と振り返る。
(C)2025 Joe Cross For Mayor Rights LLC. All Rights Reserved.本作についても「それぞれが持つ<現実>が存在していて、客観的な現実というものは、もうこの世に存在していないとも思う。同じエディントンという町で暮らしていても、同じ場所では⽣きていない――そういう意味で、現実と⾮現実を⾏き交っている感じがした」。そして「真実よりも<それぞれが信じるもの>を優先してしまう世界が描かれていて、そういう状態への恐怖はよく理解できます」と頷いた。
さらに話題は、本作で強烈な存在感を放つエマ・ストーンとホアキン・フェニックスに及んだ。最近はヨルゴス・ランティモス監督作品(「哀れなるものたち」「憐れみの3章」など)でストーンを観ることが多かったと語る奥⼭監督。本作のストーンについては、「前半は特に無表情なシーンも多い。でもだからこそ、ちょっとした笑顔や⽬の動きで観る者を不安にさせ、『不穏だな』と感じさせる。それがエディントンという町の雰囲気とリンクしていて、本当にすごいなと思いました」と称賛。「こういうエマ・ストーンが⾒られてよかった」とも語っていた。
(C)2025 Joe Cross For Mayor Rights LLC. All Rights Reserved.そして、フェニックスについては「今回のホアキンは<喘息持ち>の役ということもあって、もともと声質がか細く、不安を感じさせる」と声の特徴に注⽬。あるシーンでは「カメラがジョーの不安に寄っていく感じがして、呼吸がどんどん荒くなり、息ができなくなる感覚が、観ている側にも伝わってきて苦しかった。映画館で映画を⾒ながら、初めて⾃分の呼吸が苦しくなった」という。さらに、「アリ・アスターはよく“⼈に悪夢を植え付ける”みたいに形容されますけど(笑)、本当に映画にそういう⼒があるんだと感じました」と感嘆していた。
本作は、その内容から“トランプ政権の⼆期⽬を予⾔した”とも⾔われている。これについて奥⼭監督は「南北戦争や公⺠権運動、ベトナム戦争など、アメリカにはこれまでも様々な“分断”の歴史がありますが」と前置きし、「ただ、トランプ政権下の分断の決定的な違いは、SNSなどを通じて真偽が精査されていない有象無象の情報が事実と混在してしまっている点」と述べつつ「フェイクニュースを信じる⼈もいて、そうした状況がより分断を助⻑していると⾔えるかと思います」と推察。また、「この映画にも描かれている“視野狭窄“になり、⾃分の世界にどんどん⼊り込んでしまう“感覚”は、現在のアメリカの分断にも通じるものがある」とコメントした。
「エディントンへようこそ」は、12月12日からTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開。
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