【「ANORA アノーラ」評論】往年のハリウッド映画にも通じる端正さを物語術の核心としているロードムービー
2025年3月2日 11:00
(C)2024 Focus Features LLC. All Rights Reserved. (C)Universal Picturesアカデミー賞前哨戦で大健闘のショーン・ベイカー監督最新作「ANORA アノーラ」。このままいくとあっさりとオスカー像も手中になんて予感もひしと高まってきた。個人的にも実は「名もなき者」のジェームズ・マンゴールドか、ベイカーに監督賞をとの思いが募っている。というのもこのふたり、往年のハリウッド映画にも通じる端正さをその映画の物語術の核心としている点で肩入れしたくなる存在なのだ。
もっとも恥ずかしながらベイカーに関しては今回の快作を目にするまで、どこか半信半疑で勝手な偏見をぬぐえず、頑なにその映画を見ることも避けてきた。全編をスマートフォンで撮りあげたと注目された「タンジェリン」に新しければいいの⁈ と反発し、以来、素通りしたままとなった。最高賞を贈ったカンヌで審査委員長グレタ・ガーウィグが、ハワード・ホークスやエルンスト・ルビッチと並べて絶賛するのを聞いて、さすがに不安を覚え向き合ってみた初めてのベイカー映画「アノーラ」は、思いがけずいきなり胸を鷲掴みにしてくれた。
確かに冒頭部分、強烈な畳みかけの手持ちキャメラでニューヨークのストリップ嬢アニーことアノーラの仕事ぶりを追い、ロシアから来た御曹司イヴァンとの“契約”恋愛から結婚へと突進するシンデレラ物語を紐解くあたりまでは主演カップルのキュートでタフな熱演に惹かれつつも、喧噪まみれのクラブライフやパーティー場面に正直いえば些か引きかけた。
が、話がロシアの暗黒街でも幅をきかせる青年の両親を巻き込み、彼らの命を受けたブルックリンのアルメニア人司祭とその手下が逃走したイヴァンの行方をアニー共々追うことになる第二幕へとなだれ込むに及んで、映画は俄然、身体的コメディとして輝きだす。同時に冬のブルックリンはコニーアイランド、その寂れて物悲しい風景以下、ロケの風情が胸に染みるロードムービーとしての魅力も見逃せない。
ここで凍てつくブライトンビーチ、ロシア移民の家族をみつめたジェームズ・グレイ初期の傑作「リトル・オデッサ」、その先に睨まれていた1970年代米映画、「フレンチ・コネクション」や「サブウェイ・パニック」の撮影監督オーウェン・ロイズマンへのリスペクトが感知されると否応なしに胸が騒ぐ。さらには強面の追手のひとり、イゴール役ユーリー・ボリソフが、ヒロインに淡い恋心を抱く様にマックス・オフュルスの「無謀な瞬間」を想起し、そうして彼をこそもうひとりの主役としてロマンスの真の胸きゅんを置くベイカーの手腕に見惚れざるを得なくなる。
慌てて見てみた「タンジェリン」、そこに息づく周縁に生きる人々への敬愛を10年を経た最新作へと貫いている監督ベイカーの世界、見逃し厳禁と猛省をこめ断言してみたい。
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