【「殺人鬼の存在証明」評論】実在のシリアル・キラー、チカチーロをモデルにしたギミック満載のロシア製サスペンス
2024年5月5日 14:00

著名アーティストのミュージックビデオや、リーボックやフォルクスワーゲンなどのCMを手がける東欧ジョージア出身の映像作家ラド・クバタニアの監督デビュー作。ロッテルダムやプチョンなどのファンタスティック系映画祭で高評価を得たサイコ・サスペンス。主役を「葡萄畑に帰ろう」の軽妙さが印象的だったニカ・タバゼ。他に「1941 モスクワ攻防戦80年目の真実」のダニール・スピバコフスキー、「ICE ふたりのプログラム」のアグラヤ・タラーソバなど。
1991年。重傷を負った女性キラ(タラーソバ)が森の中で発見される。その手口はすでに逮捕され勾留中の連続殺人犯のものと酷似していた。当時の捜査を指揮していたエリート捜査官イッサ(タバゼ)は、誤認逮捕の責任を問われ、事態を収拾すべく現場に派遣される。彼はその時に組んでいた部下イワン(スピバコフスキー)と共に犯人を追った、10年前の記憶を回想していく。
「ロストフの肉屋」と恐れられ、70年代後半から50人以上の女性や少年少女を殺害、「チャイルド44 森に消えた子供たち」の題名で映像化もされた実在の連続殺人犯アンドレイ・チカチーロをモデルに、二重三重のツイストが仕掛けられたトリッキーな作品。チカチーロも最初の逮捕後に証拠不十分で一度釈放され、その後さらなる被害者を生んだ経緯があったことや、歪んだ性的倒錯や被害者の口腔に土を押し込むなどの特徴も再現。また、実際にチカチーロ事件を解決し名声を得て以降、現在はプーチンの親友として連邦評議会の代表を務める政治家イッサ・コストエフに因んだ捜査官を登場させるなど、現実と濃密にリンクした脚本が生々しさを加速させる。
138分の物語は全7章から成り立ち、死を覚悟するまでに、人間に訪れる感情を表した「否認」「怒り」「取引」「抑うつ」などの見出しが割り振られている。また直接的な描写は作中に登場しないが、チョルノービリ原発事故からソ連崩壊までの激動の時代を自由に行き来する構成を含め、曲がりくねったタイムラインの上で残虐な事件がどのように展開するか、観客はかなり翻弄され、映画的な偏差値を試されているような気になる。
ロシア舞台芸術アカデミーを卒業し、アンドレイ・タルコフスキーとフェデリコ・フェリーニの影響で映画のキャリアを志したクバタニア監督。そのデビュー作はギミックに満ち溢れつつ、スタイルは重厚だ。デビッド・フィンチャーの「セブン」やドラマ「マインドハンター」や、韓国映画「チェイサー」「殺人の追憶」、さらには「ミレニアム」のような北欧ミステリの雰囲気も併せ持った欲張りな本作品、この辺にピンと来た方にはオススメです。
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