【「クリード 過去の逆襲」評論】「ロッキー」のスピンオフが、真の「クリード」の物語となるとき
2023年5月28日 19:00

自身の輝かしいキャリアが、誰かの犠牲のもとに成り立っているとしたら――。ロッキー・バルボアの衣鉢を継いだ、王者アポロの息子アドニス・クリード(マイケル・B・ジョーダン)の物語。その最新作は過去のおこないに対する責任のドラマを描き、三部締めのニュアンスを濃厚にただよわせる。そしてキャラクターの内面へとカメラは深く迫り、「ロッキー」フランチャイズ史上最大の深刻なテーマを形成していく。
ボクシング界で成功を得たアドニスの前に、忽如として姿をあらわした旧友デイム(ジョナサン・メジャース)。先輩ボクサーとして王者を目指していた彼は、かつてアドニスの犯した暴行罪をかぶり、18年の服役を余儀なくされたのだ。アドニスはそんなデイムの現役復帰へのサポートをするが、夢を壊され、自分がいるべき地位に彼がいることへのわだかまりは、復讐と呼べるレベルでアドニスの栄光に揺さぶりをかけていく。
これまでのシリーズにおいて、アドニスは偉大な父のレガシーと向き合い、映画はそれを受容することに焦点を当てていたが、今回は自身の、若き日の過ちが試練となってのしかかる。延いてはそれが、アドニスの成功に対する再考をうながし、はたして自分がそれらに値するのかという葛藤へとリンクしていく。
こうして本作は、ロッキー神話との関係を最小限にとどめ、アドニス自身のエピソードを主体に繰り広げられていく。シルベスター・スタローンと製作サイドとの確執がその起因とも言われているが、バックステージがいかにあれ、先述の要素がこの映画に、完結編としてふさわしい独立性と達成感をもたらしているのは疑いようがない。
だがいっぽうで、しっかりと継承している要素もある。スタローンがシリーズを経て監督を兼ねたように、アドニス役のマイケル・B・ジョーダンも同じ轍を踏んでいる。日本のボクシングアニメに刺激を得たと公言し、なるほどトレーニングモンタージュのグラフィカルな構成や、心情を視覚化する大胆な映像演出にその影響をうかがうことができる。特にアドニスがデイムとグローブを交わしたときの、スタジアムが無観客になる幻想場面などは、その戦いがタイトルマッチではなく、自分自身との対峙であることを表象する優れたものだ。
本作によって、「クリード」は「ロッキー」のスピンオフ以上の存在になり得たのだ。そこにあるのは、アドニス・クリードの個人史に自覚的な、挫折と復活の壮大なクロニクルだ。
(C)2023 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All rights reserved. CREED is a trademark of Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All rights reserved.
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
配信を待つな!劇場で観ないと後悔する
【人間の脳をハッキング“レベルの違う”究極音響体感】戦場に放り込まれたと錯覚する没頭がすごすぎた
提供:ハピネットファントム・スタジオ
感情ぐっちゃぐちゃになる超オススメ作!
【イカれた映画を紹介するぜ】些細なことで人生詰んだ…どうにかなるほどの強刺激!
提供:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
なんだこの“めちゃくちゃ面白そう”な映画は…!?
【妻を殺したのは…自分…?】あなたにも起こり得る驚愕×ド迫力タイムリミットスリラー!
提供:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
エグすんぎ…人の心はないんか…?
【とにかく早く語り合いたい】とにかく早く観て! そして早く話そうよ…!
提供:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント