【「ソウルフル・ワールド」評論】予想の一歩先を見せてくれる、ピクサー作品のストーリーの妙
2021年1月31日 08:00

ピクサー作品は、見ていて「こういうオチになるだろうな」と予想する一歩先を見せてくれることが多い。ファミリー映画のジャンルのなかで人生の深みを感じさせる描写をさらっと描き、手垢のついた教訓や結末とは異なるフレッシュなエンディングで見る人をうならせる。多くの頭脳によって考えぬかれたストーリーの妙に、どうやってこの話を思いついたのだろうと驚かせてくれる。
11歳の少女の感情をキャラクター化した「インサイド・ヘッド」で、ネガティブにとらえられがちなある感情をポジティブに描いた(これにも驚かされた)ピート・ドクター監督が選んだ舞台は、人間が生まれる前の「ソウル(魂)」の世界。中年男性のジョーと、人間の世界に興味がもてない22番と呼ばれるソウルが、バディとなって現実世界とソウルの世界を行き来する。
ジャズミュージシャンになる夢を叶える寸前にソウルの世界に迷い込み、なんとしても現実世界に帰りたいジョーと、夢中になれる「人生のきらめき」を見つけられず現実世界に出たくない22番。音楽に夢中で生きてきたジョーに感化された22番は人間的成長をとげ、ジョーは現実世界で念願のミュージシャンへの道を歩みはじめる――予告編や本編の途中まで見て思い描くストーリーの一歩先を本作では見せてくれる。
この映画を見た人は、ジョーが夢見たライブでの演奏シーンよりエモーショナルに描かれる、ある日常の場面にハッとさせられたはずだ。何かに夢中になることが必ずしも人生の目的ではないことを圧倒的な映像力で見せ、人生のメンター(指導者)であるジョーは、単なる生活の一部だと思っていた日々の日常にこそ「人生のきらめき」が宿っていることを、人生の後輩である22番から教えられる。明石家さんまの名言「生きてるだけで丸儲け」を思わせる人生賛歌にたどりつく物語と、この物語が観客に届くと信じたピクサーの心意気に、私も少し人生が変えられた気がした。
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