ギャスパー・ノエにとって「アングスト」はオールタイムベスト入り! 上映禁止なのに「60回は見た」
2020年6月3日 12:00

[映画.com ニュース] 「アレックス」「LOVE 3D」といった衝撃作を手がけてきたフランスの鬼才ギャスパー・ノエ監督が、世界各国で上映禁止となった実録スリラー「アングスト 不安」の日本劇場初公開を記念したメッセージを発表した。
83年にオーストリアで製作された本作は、実在の殺人鬼ベルナー・クニーセクが起こした一家惨殺事件を題材にした実録スリラー。刑務所出所後の殺人鬼(=狂人)が感じる不安やプレッシャーによる異様な行動と心理状態を、凶暴かつ冷酷非情なタッチと斬新なカメラワークを用いて表現。公開当時はショッキングな内容により、本国オーストリアでは1週間で上映打ち切り。ヨーロッパ各国で上映禁止となり、イギリスとドイツではビデオの発売もNG、アメリカでは“XXX指定”となり配給会社が逃亡したという。

日本でも劇場公開はされず、88年に「鮮血と絶叫のメロディー 引き裂かれた夜」というタイトルでレンタル用VHSが発売されたが、世の中に出回った数は極少。“見たくても見られない作品”となり、現在へと至っている。ノエ監督は、自作「カルネ」「CLIMAX クライマックス」などでオマージュを捧げるほど、本作の大ファン。フランスでも上映禁止となり、後に発売されたVHSも極わずかしか出回っていないのだが「今までに60回は見た」と打ち明ける。
そして「この映画は見た人がほとんどいない。全く無名の作品であることもこの映画の魅力だ」「常に素晴らしい作品が影を潜めていて、再評価されるべきものがある」と喜びと期待をあらわに。ノエ監督は、かつて“オールタイムベスト5”を発表しており「アルゴ探検隊の大冒険」「2001年宇宙の旅」「イレイザーヘッド」「ソドムの市(1975)」とともに本作のタイトルをあげるほど、筋金入りのファンなのだ。

ノエ監督の注目ポイントは、斬新なカメラワーク。「見事なテクニックと映像の捉え方は絶対に見てほしいところだ。映画史上最も重要なカメラワークと言えるだろう」と撮影を担当したズビグニェフ・リプチンスキの手腕を絶賛している。アカデミー賞最優秀短編アニメ賞「タンゴ」や、ジョン・レノン、ミック・ジャガーらのMVで知られるリプチンスキ。その独特な撮影手法が、ノエ監督だけでなく、「ブラック・スワン」のダーレン・アロノフスキー監督にも影響を与えるなど、スリラー映画におけるカメラワークの根幹を築いた人物ともいえる。

ノエ監督は、公開を待ち望む日本のファンへ向けて「暴力行為を目の当たりにする一方で、加害者(=主人公)からの被害を耳にする。とても複雑で魅力的な映画だ」と“単なる殺人鬼映画”ではないことを強調。「ついにこの映画史上に残るマスターピースが日本で公開されることを知りとても嬉しく思う」とコメントを寄せている。
「アングスト 不安」は、7月3日から東京・シネマート新宿ほか全国順次公開。R15+指定。
(C)1983 Gerald Kargl Ges.m.b.H. Filmproduktion
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