鬼才ヘルツォークの“あやしい”ドキュメンタリーを柳下毅一郎が絶賛
2012年5月16日 18:30

[映画.com ニュース] ドイツの鬼才ベルナー・ヘルツォーク監督のドキュメンタリー「世界最古の洞窟壁画 35mm 忘れられた夢の記憶」の公開を記念し5月15日、渋谷シアターNで映画評論家の柳下毅一郎氏を迎えたトークイベントが開催された。
1994年に発見された、南仏のショーベ洞窟内部に3万2000年前に描かれた壁画を撮影。フランス政府の許可のもと1日最大4時間、計6日間という制限の中で撮影が行われ、研究者へのインタビューなどを織り交ぜた構成となっている。
ヘルツォークは、ライナー・ベルナー・ファスビンダー、ビム・ベンダースらと並び、ニュー・ジャーマン・シネマをけん引した一人として知られ、「アギーレ・神の怒り」「フィツカラルド」など男の野望を描いた作品が有名だ。柳下は、怪優クラウス・キンスキー主演のこれらの作品を「世界をねじ伏せようする人間を説得力たっぷりに描く。すごいものを見たと思った」と評する。
日本での劇場公開は少ないが、ヘルツォークは今作以外にもドキュメンタリーを数多く手がけている。柳下は、熊の研究にのめり込み、最終的には熊に食べられてしまう男を追った「グリズリーマン」や、アメリカの若き死刑囚5人と対話した「Into the Abyss」など劇場未公開作を紹介。「ヘルツォークのドキュメンタリーはめちゃくちゃおもしろい。日本でも公開してほしい」と、独自の視点で撮られた作品の見どころを解説し「彼は人間の限界を超えたいと思っており、神や霊的な存在と一体化したいのでは」と分析する。
そして、ヘルツォークのドキュメンタリーの魅力は、作為的な”あやしさ“だという。今作でも、洞窟壁画を撮影するだけでなく、ヘルツォーク自身の解釈によると思われる不可思議な映像が挿入されている。「後半からあやしくなってきて、どこまで本当か分からない。どこかで大ウソをついているようなところがすごくおもしろい。ヘルツォークのドキュメンタリーには常に演出がある」といい、「ウソはあるけど真実。現実と真実は別のもの。真実を描くために少しの演出は許されるのでは」と持論を述べた。
「世界最古の洞窟壁画 35mm 忘れられた夢の記憶」はシアターN渋谷ほかで公開中。5月18日には犬童一心監督、 6月1日は「鉄コン筋クリート」のマイケル・アリアス監督のトークイベントを開催する。
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