スーパーサイズ・ミー ホーリーチキン!のレビュー・感想・評価
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あの男が、今度はチキン業界を暴く!!
2004年のドキュメンタリー映画「スーパーサイズ・ミー」は、
30日間1日3食マクドナルドを食べ続けたことによる自身の精神的・肉体的症状を撮影したスキャンダラスな内容で、
世界興行収入2,200万ドルを記録、アカデミー長編ドキュメンタリー映画賞にノミネート、
更にマクドナルドはこの映画の公開後に「スーパーサイズ」オプションを廃止。
同作は今でも米国の学校の保健の授業で教材として使われるなど、米社会にとって大きなセンセーションとなった。
その、なんと13年ぶりの続編が本作。
あのモーガン・スパーロックが再び立ち上がり、
今度はファーストフードのチキン業界に切り込みを入れ、更になんと自身のファーストフード店をオープンさせると言う、長い年月のブランクをまるで感じさせない大胆不敵な挑戦を描いている。
ウェンディーズなどのチェーン店、更にはセブンイレブンのコンビニに至るまで、
前作と同様、実際に現地で自身が食品を食べて調査をしている。
臭いや色の異変、中身がスカスカの空洞の粗雑なフライドチキンなど、その実態を暴いていく。
そして、なんと自身が養鶏まで実際に行い、おびただしい数の雛を一から育て、食用に出荷する過程も描いている。
ブロイラーの衝撃の実態や、急激な早さで成長したニワトリが、様々な病気にかかり、心筋梗塞や心臓発作を起こしたり、身体を支えきれず骨折して途中で死んでしまうニワトリもいるという衝撃の結果。
そして、その過程でたまたま生存したニワトリを、一般で食用で流通しているという現状。
解剖のシーンもショッキングで、この辺りの描写は「いのちの食べかた」に通底していると思った。
養鶏業界にも切り込みを入れ、ランクづけされた養鶏家が、大企業の命令で低賃金でハードワークをさせられている恐ろしい支配体系の実態、
あのモーガンがその調査に乗り出していると知る否や、企業側が手回しをすると言うサスペンスフルな展開もあった。
そしてマーケティング、一般市民へのインタビューも前作と同様に行い、
なんと13年ぶりに、再びマクドナルドへ推参するシーンも。
外観こそ変わったが、やはり味は同じであり、モーガンは難色を示していた。
総評として、
スキャンダラスな内容と、エッジの効いた作風は健在だった。
なお、以降のモーガン・スパーロックは、
2017年12月、#MeToo運動が盛り上がりを見せるなか、自身の連続不倫や元アシスタントに対するセクハラ疑惑、大学時代の強制わいせつの訴訟についてSNSに長文を投稿。
ドキュメンタリー作家としてのキャリアに事実上終止符が打たれていたという不穏なニュースが続き、
そして2024年5月23日(現地時間)、がんの合併症のため、
ニューヨーク州北部で53歳の若さで死去した。
かなり皮肉の効いた映画
現在アメリカは非常に肥満や成人病などの問題が多く
健康志向に向かっていると言う。
特に食べる物に関してその健康志向が強く
外食産業でも健康志向を謳った企業が多数出ている状況。
そこでその実態はどの様なものか?と言うのが今回のテーマ。
正直言うとかなりグロテスクな内容もあって
もうフライドチキンは食べたくなくなる様な内容。
恐らくこの監督はかなり左派的で食事に対する意識も高いのだと思う。
だからかなり色眼鏡が入っているところはあると思う。
しかしその分を差っ引いてもかなりゲッソリする内容。
この監督の真骨頂は最後にその欺瞞だらけの業界を暴きながら
実際その店を開いて来店する客達にその矛盾を見せつける事。
恐らくその内容を見たらかなりの人数が帰ったんじゃないかなと思うけど
彼はハナからフライドチキンで成功しようなんて考えていない。
その欺瞞を暴いて尚且つその欺瞞だらけのチキンを来店する客達に食べさせようとするのがスゴイ。
結局このチキンを求めているのは消費者側なのだ。
油っぽくてカロリーたっぷり。
しかも気休め程度に健康志向を訴えて
尚且つ金額的に安くなければいけない。
そうでなければ企業が存続できない。
その欺瞞だらけの内容を横目で眺めつつ
(時には眉をひそめつつ)苦笑いしながら油たっぷりのチキンを貪り食う。
自分も一応は食品業界にいるものとして
ちょっと考えさせられるものがあった。
問題を知るには、自分が問題の一部になる
今回は、チキンをターゲットに監督が自分で店を立ち上げて、問題提起する映画だ。
世界で一番消費されている肉は鶏肉らしい。正直最初からワクワクした。
監督はチキンサンドを売るために、店の立ち上げから、原料となる鶏のひよこの入手からスタートする。しかし最初から監督は行き詰まってしまう。多くの養鶏場はビッグチキンと呼ばれる大手ファーストフード会社(KFCなど)が握っており、養鶏も加工も全てその会社の指示で動いているという。なので個人企業の監督には卸せない。
監督は四方に電話して個人にもひよこを売ってくれるところ、また養鶏場の一部を貸し出し育成してくれるところを探すことになる。
これと同時進行して、顧客売れる品物にするために、メニュー研究、お店のロゴデザイン、店の購入、内装リフォーム、監督自ら出演するTVを利用して店の宣伝などなど具体的に現実にしていく様子はそれだけでもとてもおもしろい。各専門家の協力を得ながら、他のファーストフード店調査も取り入れて、現代の客が求める味とイメージについて切り込んでいく。
私達が普段一体どれだけ効果のない、ただ健康をイメージさせる言葉で健康になった気でいるか教えられているようだ。
屋外飼育の定義がほとんど意味をなしていないのには笑ってしまった。
また食用となるチキン、ニワトリについても、ただ残酷に畜殺されるということではなく、一体どんな生き物になっているのかということをこれまたリアルに伝えてくれる。
現在食用鶏は、普通成鳥になるまで倍以上かかるはずの期間を飛ばしておよそ6週間で成鳥となるよう交配を重ねているようだ。早くて肉付きよく育てばそれだけ消費に繋がる。
しかしもちろん急激な成鳥は、ニワトリにとっては害でしか無い。ニワトリは様々な病気になり、心臓発作を起こしたり、身体を支えきれず骨が曲がったり骨折して途中で死んでしまう個体も出るという。せめて人道的な育成を、処理をと思っても、現実の需要と供給の上では成り立たない。
ここまで具体的に知れたのはこの映画が私は初めてだった。
また問題はそれだけではない、養鶏家に課されるビッグチキンからの支配的な独占環境、他と競わせ、また評価の軸も曖昧で、前年一位だったところが翌年には最下位に転落することもあるという。
ビッグチキンはヒナの出荷をコントロール下に押さえており、なにか不都合なことをされれば弱いヒナを送りつけられる恐れもあるようだ。
CMで養鶏場、スタッフたちと仲良く経営を行っているとPRする企業はその養鶏場から訴えられていることが作中で伝えられる。経営で借金を途切れさせず行わせ、このままでは後継も身内にさせたくない、辛いからと訴える養鶏家の声が悲痛だった。
立ち上げた店ではその軌跡がコメディタッチに、しかし数字と写真をもってしてお客に伝えられる。不都合な真実というよりかは、どうアクセスすればいいかわからなかった情報たちだ。
エピローグでは前作同様、その後のエピソードが少し語られる。
チキンを食べることはやめないけど、自分で判断するためにもこの映画を見れてよかったと思う。とてもおもしろかった。
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