いつか晴れた日にのレビュー・感想・評価
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いつか晴れた日に 映画レビュー
ジェイン・オースティン文学の映画化作品において、1995年公開のアン・リー監督作「いつか晴れた日に」ほど、理知と感情の均衡が極めて高い次元で結実した例は稀有である。本作は、単なる文芸ロマンスの枠を超え、社会的な制約の中で生きる人間の尊厳と葛藤を描き出した傑作として、映画史にその名を刻んでいる。
まず、作品全体の完成度について考察する。本作の白眉は、英国文学の伝統的な機微を、台湾出身であるアン・リー監督が異邦人の視点から繊細かつ客観的に捉え直した点にある。オースティンが描く19世紀初頭の英国社会における「家父長制の重圧」や「感情の抑制」というテーマは、東洋的な儒教道徳に基づく自己規律の精神と奇妙な親和性を見せている。リー監督は、言葉にされない感情の揺らぎを、風景や室内の静寂を通して雄弁に語らせた。脚本を手掛けたエマ・トンプソンは、原作の持つアイロニーとユーモアを現代的なテンポで再構築し、第68回アカデミー賞において脚色賞を受賞するという快挙を成し遂げた。また、本作は第46回ベルリン国際映画祭において金熊賞を受賞しており、その芸術的評価は揺るぎないものである。アカデミー賞では脚色賞のほか、作品賞、主演女優賞、助演女優賞、撮影賞、作曲賞、衣装デザイン賞にもノミネートされ、主要部門を席巻した。
ストーリーは、分別(Sense)と多感(Sensibility)という対照的な性質を持つダッシュウッド家の姉妹を軸に展開する。父の死により財産と屋敷を異母兄に奪われたダッシュウッド母娘は、サセックス州のバートン・コテージへと移り住むことを余儀なくされる。長女エリノアは、礼節と理性を重んじ、自身の感情を深く内面に秘める女性である。彼女は内気な青年エドワード・フェラースに惹かれるが、彼の複雑な事情を察し、その想いを封印する。一方、次女マリアンヌは情熱的で芸術を愛し、感情を隠すことを美徳としない。彼女は誠実だが年長のブランドン大佐からの求愛を退け、若く快活なウィロビーとの激しい恋に身を投じる。しかし、運命は彼女たちに過酷な試練を与える。ウィロビーの裏切り、エドワードの秘密の露見、そしてマリアンヌの命に関わる重病。これらの苦難を経て、姉妹は互いの価値観を理解し合い、真実の愛とは何かを見出していく。物語の結末は、単なるハッピーエンドではなく、社会的なしがらみの中で個人の幸福を勝ち取った女性たちの静かなる勝利として描かれている。
映像・美術・衣装の観点からは、当時の英国の階級社会が見事に視覚化されている。撮影のマイケル・コウルターは、英国の田園風景を牧歌的に美しく捉える一方で、屋敷内部のシーンでは窓枠や扉越しのアングルを多用し、登場人物たちが社会的な枠組みに囚われている閉塞感を表現した。美術においては、以前住んでいたノーランド・パークの壮麗さと、移り住んだバートン・コテージの質素だか温かみのある内装が対比され、姉妹の境遇の変化を雄弁に物語る。ジェニー・ビーヴァンとジョン・ブライトによる衣装デザインも秀逸である。エリノアの衣装は落ち着いた色調と実用的なラインで彼女の堅実さを、マリアンヌの衣装は軽やかな素材と柔らかな色彩で彼女の奔放さを象徴しており、衣服がキャラクターの心理を映す鏡として機能している。
音楽については、パトリック・ドイルが作曲を担当した。彼のスコアは、クラシック音楽の格調高さを保ちつつ、抑制された感情が溢れ出す瞬間をドラマティックに彩っている。特に弦楽器を中心とした旋律は、英国の霧深い風景と調和し、観る者の涙腺を刺激する。劇中、マリアンヌが歌う楽曲「Weep You No More Sad Fountains(悲しみの泉のほとりで)」は、彼女の悲劇的な運命を予感させる哀切な響きを持っており、物語の情感を深める重要な要素となっている。主題歌としてのポップソング等は存在せず、全編を通して劇伴と劇中歌が作品の世界観を統制している。
役者陣の演技は、本作の格調を決定づける最大の要因である。
主演のエリノアを演じたエマ・トンプソンは、脚本家としての深い理解を演技へと昇華させている。彼女の演じるエリノアは、家長としての責任と個人的な思慕の間で揺れ動く。トンプソンの演技の真骨頂は、その「抑制」にある。悲しみや動揺を表に出さず、微細な表情の変化や声のトーンだけで内面の嵐を表現する技術は圧巻である。特に、クライマックスにおいてそれまで抑圧し続けてきた感情が決壊し、嗚咽するシーンは、映画史に残るカタルシスをもたらした。理性的な女性が抱える孤独と強さを体現した名演であり、アカデミー主演女優賞にノミネートされたのも納得の出来栄えである。
助演でありながら強烈な印象を残すブランドン大佐役のアラン・リックマンは、それまでの悪役イメージを一新する名演を見せた。彼の演じる大佐は、マリアンヌへの深甚なる愛を抱きながらも、彼女の幸福を第一に考え、ただ静かに見守るという「大人の愛」を体現している。リックマンの重厚な低音と、憂いを帯びた眼差しは、セリフ以上の説得力を持ち、誠実さの象徴として作品に重みを与えた。
次女マリアンヌを演じたケイト・ウィンスレットは、当時まだ新人であったが、その瑞々しい才能を遺憾なく発揮している。彼女は「感性」の象徴として、喜びも悲しみも全身全霊で表現し、エリノアとは対照的な存在感を放った。雨の中、愛する人を求めて丘を見上げるシーンでの鬼気迫る表情は、若さゆえの危うさと情熱を見事に表現しており、アカデミー助演女優賞ノミネートに相応しい熱演であった。
エドワード・フェラースを演じたヒュー・グラントは、彼特有の戸惑いや吃音を含んだ話し方を駆使し、優柔不断だが憎めない青年像を確立した。当時のロマンティック・コメディで見せた軽妙さとは異なり、自身の立場と恋心の間で苦悩する誠実な紳士を繊細に演じている。彼の不器用な振る舞いは、この時代の男性が抱える不自由さを象徴しており、トンプソンとの静かなるケミストリーは作品に品格を与えた。
総じて「いつか晴れた日に」は、脚本、演出、演技、美術のすべてが有機的に絡み合い、オースティンの世界観を完璧に映像化した稀有な作品である。それは単なる恋愛劇にとどまらず、人生の不条理と、それを受容し乗り越えていく人間の強さを謳い上げた、普遍的な人間ドラマであると言える。
作品[Sense and Sensibility]
主演 評価対象: エマ・トンプソン 適用評価点: A9
助演 評価対象: アラン・リックマン、ケイト・ウィンスレット、ヒュー・グラント 適用評価点: A9
脚本・ストーリー 評価対象: エマ・トンプソン 適用評価点: A9
撮影・映像 評価対象: マイケル・コウルター 適用評価点: B8
美術・衣装 評価対象: ルチアナ・アリギ(美術)、ジェニー・ビーヴァン、ジョン・ブライト(衣装) 適用評価点: A9
音楽 評価対象: パトリック・ドイル 適用評価点: B8
編集(減点) 評価対象: ティム・スクワイアズ 適用評価点: -0
監督(最終評価) 評価対象: アン・リー 総合スコア:[ 88.7 ]
ふんわりとした雰囲気に観入ってしまう
CSで放送されてて何気に観ていたが、ストーリーにどんどん引き込まれていった。
人物名に慣れず、複雑な人間関係なのでちょいちょい混乱したけれど。
時代背景もあると思うけれど、
やっぱりどの時代も女性は生きづらいのだなと感じた。
ただ、素敵な人と出逢い、恋愛をしていく様子が思った以上に周りにオープンで、現代だと“恋愛脳”とバカにされそうな生き方がこの時代ではそれが普通で、
しかも生きていくために大事な事だから愛する人の事だけを考えながら生きていくのも案外楽しそうだと思った。
ずっと青春時代が続いてるような感じ。
結婚するならブランドン大佐のように誠実で一途に想ってくれている人とするのが一番だよなぁとしみじみ。
ひとまわりほど年齢が離れていてもめちゃくちゃカッコいいし、マリアンヌは大失恋したけれどこの選択をして大正解!
この2人の結婚式を遠くから見ていたウィロビーは一生後悔しながら生きていくんだろうなぁと思う。
奥さんは美人だったけど…ちょっと性格キツそうだったし。。
アラン・リックマンはハリポタでの演技しか知らなかったけれど、めちゃくちゃカッコよくて他の作品も観てみたい。
三女のマーガレットは姉妹の中で一番美人で活発なので、この子もたくさん恋愛して泣いて良い恋をしそうだなぁと思った。
つまんない・・・
うーん、これはダメでした。内容が非常にどーでもいい。
恋愛の話で、どっちでもいいので共感できんかった。
時代が全然違うせいもあるし、恋愛映画が好きでないのもある。
見終わった後は清々しいさざなみが心にこだまするような素敵な映画。 ...
【結婚に必要なのは、お金と家柄? ”時が変わると変わる愛は本当の愛ではない”とシェークスピアは言っていたけれど・・ 】
19世紀、イギリス貴族の一般的な結婚観に縛られた様々な男女の物語。
ダッシュウッド卿は亡くなる際、息子のジョンに、後妻と3人娘、エリノア(エマ・トンプソン)、マリアンヌ(ケイト・ウインスレット)、マーガレットの面倒を見てくれと頼むが、ジョンの妻にイロイロ反対され、彼女たちには500ポンドしか遺産が渡らなかった・・。
・エドワード・フェリス(ヒュー・グラント:ウワワ・・若いなあ)は魅力的だが、大人しく、野心家ではない。
・ブランドン大佐(アラン・リックマン)は過去に哀しき経験をしたために独身。
・ウィロビーは若くて、乗馬も上手い一見紳士。
この三人の貴族とエリノアとマリアンヌの絡み合った恋愛を、美しい英国の田舎の自然を背景に描き出した作品。
<ウィロビーは論外としても、もうちょっとしっかりしろよ、エドワード。ブランドン大佐以外の男が、かなり頼りなく見える映画。叔母様、お母様の言いなりじゃないか! 読んだことはないが、ラブロマンス小説を読んでいるみたいな気分になった作品でもある。>
淑女との対比
もどかしい恋愛が素敵
ケイト・ウィンスレット
美しい姉妹
古き良き油彩画を見るよう
まず、映像がすごく綺麗でした。
まるで古い時代の油彩画がそのまま背景になったよう。
そして、馬や馬車がそこを過ぎる。
しかし人間の感情のドラマは複雑で
少々ねちっこいな、と思いました。
このあたりがイギリスかなあ。
ヒューグラントがあまりによい人で驚きました。なにしろ、ブリジットジョーンズからヒューグラントを見始めたので。笑
いろいろあったすえ、最後はハッピーエンドで、ほっとしました。
しかし貴族とはいえ、当時の女性には自由がなかったな、と思いました。
父がなくなれば屋敷を追われたり。
恋愛も、身勝手な男性に翻弄されたり。
たぶん同じような時代のフランスの
ココシャネルなどはやはりすごく特別な、革新的な存在だったな、と
最近見た映画を思い出しました。
父の死から始まる
あたたかな家族愛!
リアルな人間ドラマ
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