劇場公開日 1994年12月23日

スウォーズマン 女神伝説の章のレビュー・感想・評価

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3.5荒唐無稽で面白い

2026年1月12日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

興奮

ドキドキ

香港の有名な武侠小説家・金庸の『秘曲 笑傲江湖』(未読)をツイ・ハークが映画化した武侠アクション映画シリーズの第2作。このシリーズは原作に比べて大幅な脚色がされているとのことだが、金庸の武侠小説が続々と邦訳されていくのは21世紀に入ってからで当時の日本ではほとんど知名度が無く、僕も全然知らなかった。『スウォーズマン』という邦題は英語題の「Swordsman(=剣士)」からだと思うが、Sword(剣)の「w」は発音しない文字なので一般的によく使われる「ソード」のほうが正しい発音に近い。しかしなぜかファンタジーRPGなどでは「スウォード」と表記されることも多く、そのためもあってか「スウォーズマン」という邦題になったんだろう。あと「ソーズマン」だと字面や音の響きがなんだかちょっとカッコ悪いからかも。

日本では1作目は『スウォーズ・マン』の邦題で映画祭上映されたものの劇場公開はされず、本作とスピンオフの『女神復活の章』が公開&VHS化された後に『スウォーズマン 剣士列伝』の邦題でVHS化された。DVD化もされているが僕は未見。

本作は僕の地方では次作『女神復活の章』との二本立てで公開された。いきなり2作目から観たわけだが、取り立てて問題はなかったように記憶している。香港映画にはよくあることだが、なぜか主要キャストが第1作からほとんど総入れ替えされており、主演はサミュエル・ホイからジェット・リーに、ヒロイン役のチョン・マンはロザムンド・クワンに、もう1人のヒロインである妹弟子イップ・トンはミシェール・リーにそれぞれ変わっているとのこと。だが、なんといっても全員を食っちゃうほどの怪演だったのが原題にもなっている敵役・東方不敗のブリジット・リン。原作では武術の奥義会得のために自ら去勢して男でも女でもなくなった高年齢の人物だそうだが(イメージとしては宦官か?)、映画ではブリジットが演じてるだけあって中性的というか男装の麗人といった雰囲気。彼女の当たり役となり、ブリジットは他の映画でも似たような役を次々に演じることになった。また、その後の『秘曲 笑傲江湖』映画化&ドラマ化作品でも東方不敗は女優が演じるのが通例になったが、金庸は原作と異なり女優が東方不敗を演じるということに非常に不満らしい。

本作では秀吉への服従を拒んだ信長の残党が逃げてきて東方不敗と手を組むというオリジナル展開があり、その残党が敵を攻撃する時の「○○斬りだっ」などという日本語吹替台詞(吹替版ではなく字幕版のオリジナル吹替)が、その辺の日本人を連れてきて吹替させたんじゃないかというぐらいのひどい棒読み(笑)。残党と話すブリジット東方不敗のたどたどしい日本語とか、酒宴で興に乗った残党たちが踊り出して歌うのが「あんたがたどこさ」だったりとお馴染みの勘違い日本描写がありつつも、映画のほうはワイヤーワークを駆使したド派手なアクションでなかなか面白かった。

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バラージ

3.5散り際の東方不敗

2025年11月12日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ツイ・ハーク制作の作品で、当初はキン・フー監督が撮っていたものの途中降板したという経緯があり、その点は作品全体にも表れているように感じました。キン・フー的な文人武侠の気配はほとんど残っておらず、時代がだいぶ進んだこともあって、むしろ90年代香港アクションらしい勢いと混沌が前面に出ている作品だと思います。

本作でもっとも印象に残るのは、やはりブリジット・リン演じる東方不敗です。両性具有のキャラクターとして描かれており、圧倒的な強さと同時に、恋をした一人の存在としての弱さや悲しさも同時に抱えています。主人公はジェット・リーで、これも“香港映画らしい”と言っていいのですが、とにかくやたらモテるタイプの主人公で、あちこちから好意を寄せられるお決まりのパターンで描かれています。

作中で東方不敗と主人公が一夜を共にしたかどうかという点は、観客側から見ると完全に「東方不敗の恋人・シィシィのほう」とはっきり分かる撮り方になっています。ただ主人公のほうだけが最後まで確信が持てず、そのまま崖の上の対決に至り、東方不敗が「死ぬまで悩めばいい」と言い残して去っていく。このやり取りが非常に切なく、強さと弱さを併せ持つ東方不敗というキャラクターを象徴するシーンだと思います。

アクション面では、水の上を走ったり、爆破がやたら多かったりと、当時の香港ウーシア映画らしい勢いが全開で、ワイヤーが見えてしまうような箇所も気にせず押し切るパワーがあります。意外だったのは、部分的にクロサワ映画のようなディープスペース(手前に顔のアップ、奥に人の列や空間が広がる構図)が使われていた点で、画面に奥行きを持たせる工夫があることでした。ただ、基本的には“勢いと見せ場”で突っ走るタイプの映画だと思います。

全体として、ジェンダー表現なども盛り込まれてはいるものの、作品としてはあくまで娯楽アクション映画の範疇で、社会的メッセージを強く打ち出すような作りではありません。アクションの派手さとキャラクターの魅力を中心に楽しむ映画であり、その中で東方不敗という特異で魅力的なキャラクターが後世に強く残った理由もよく分かる一本でした。

鑑賞方法: Blu-ray (香港版)

評価: 70点

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neonrg