愛を弾く女のレビュー・感想・評価
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じわりとくる。愛とはなんぞや。どう表現したらいいのだろうか。
誰よりも感受性が豊かなのに、人と情愛を分かちえない男の話。
それを理解して寄り添ってくれる人もいれば、
それに傷ついた女に振り回されることで、安定した関係を失う。
その別れと再生に、じわっと来てしまう。
その性質のために、誰もがやらない役割を担い、
誰よりも共振して、至高の芸術を生み出せる関係なのに、日常生活ではすれ違う。
穏やかな日常はあるものの、心の奥底がひりひり痛い。
そんな彼をとりまく、一人一人を役者が見事に演じる。
静かなる熱い視線を送る主人公・ステファン。
その対象者であるカミーユの繊細さと同時に勝気な姿で、可憐で妖艶。それでいて思春期女子のような少女の雰囲気と、不倫さえものともしない百戦錬磨な様相と。拒絶された後の報復の様は狂気なれど、共感してしまい、心が痛い。
マキシムは、フランスの伊達男。ステファンとカミーユの、プラトニックなれどの関係性に気がついても、意外にカミーユにも誠実。そんな設定の嘘くさい男だが、デュソリエさんが演じると、鼻につかない。
レジーナは、パトロンであり、マネージャーでありという複雑な関係性なのだが、醜い感情のシーンがほぼなかったからか、格好いい。
ステファンとカミーユの音楽教師を支えるマダム・アメが、本来の男女の支え愛をさりげなく、体現してくれて、ステファンがこうはなれないだろうなと言うのを体現してくれて、ステファンの苦悩を浮き彫りにしてくれる。
なんとも、解りがたくも、そのすれ違いに共感してしまう。
何とも、オトナな恋模様。
修羅場もあるのに、全体的にゴージャスで、スマート。
この恋愛が理解できない方は低評価をつけるであろう。
でも、恋・愛のある様相を堪能させてくれる。
こんな機微の恋愛をしたら、人生の幅が拡がるかもしれない。
ベアールさんは『美しき諍い女』『ミッションインポッシブル』と、この映画くらいしか観ていないが、美しさはともかく、演じた役柄が違う。すごい。
オートウイユさんは『あるいは裏切りという名の犬』と、この映画くらいだが、こちらも全く違う。
男の美学かな〜
かくもかなしき思慮深き男の運命かな
個人的に今まで観た悲劇系のラブストーリーなら断トツでこれ一番。タイタニックなんてこれに比べれば子供だましです。
ダニエル・オートゥイユ演じるしがないバイオリンの調律師と、その上司を恋人にもつ前途有望なバイオリニストの女(エマニュエル・べアール)の哀れな恋物語。お互いに一目ぼれだが、自分の気持ちを告白しようとしない男に業を煮やし、女から詰め寄る。が、あっさり「君なんて好きじゃない」と男は言ってのける。もちろん男は嘘を言っているのだが、ある意味それは彼の複雑な境遇の心境を言い表すにはベストな言葉。
男は、余命わずかな親友に頼まれ安楽死の注射も顔色ひとつ変えずに打ってしまう人。彼の優しさの横に常にいるのは、世界を深く見据えてしまう故の、誰にも理解しがたい愛に満ちた冷たさ。こういう人は孤独を愛するものです。
ミヒャエル・ハネケ監督がダニエル・オートゥイユを「一見普通の常識人に見えるが、心の底にやましさがありそうな役をやらしたら抜群」と評したように、この映画の彼の演技は一生心に残るものとなっています。最後の、ガラス越しに映るダニエルの姿が、光の反射と共にかすんでいく映像が、この映画のすべてを語っていると思う。素晴らしい。監督さんただものじゃありません。
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