妻(1953)のレビュー・感想・評価
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上品な高峰三枝子さんが、えーーーーっ!
結婚して10年という長さは、それ程長くも短くもないのに、互いに話もしない、言葉も交わさない。つまらない、何が原因だろう?子どもがいないことでもなさそう。貧しい、金が・・・と言いながら、二階は間貸ししているし、一階の個室は美大の学生が下宿している。それだけの家賃収入があり、夫は会社では偉い立場、でも妻は内職してるというのは、当時は戦争をまだ引きずっていたのかなあと思った。妻は夫の怪しい振る舞いで実家に帰る、すると父親が娘(高峰三枝子)の夫に話に来る。いいのか悪いのかわからないがこれが家父長制?と思った。
でもそんなことを飛び越えてびっくり感動したのは高峰三枝子!夫との晩御飯中に、箸を爪楊枝として歯掃除に使い、そしてお茶を口に含んでブクブクうがいをして飲み込んだ!夫もいる昼間に友だちが来てもふてくされて布団に寝ている高峰三枝子!上品でいいところのお嬢様である高峰三枝子がそういう演技をすることにひたすらびっくりして感動!吉永小百合がそういう演技をしたら、私は喜んで彼女の映画を見るようになるかもしれない。役者としては絵描き美大生の三國連太郎がとてもよかった。声はこの時から張りのあるいい声。そして顔つきは息子の佐藤浩市!若い三國連太郎、キュートで喜劇で素敵だった。
高峰三枝子の夫(上原謙)は本当に暖簾に腕押し男でむかついた。そんな上司に色目を使う、または恋する役を丹阿弥谷津子が演じているのが意外だった!若い時もえくぼの可愛いお方。昔の邦画は、男女ともに役幅が広くて面白い!
モノローグで始まり、モノローグで終わる夫婦
1953年。成瀬巳喜男監督。しがないサラリーマンの夫と専業主婦の妻は結婚十年。持ち家だが使わない部屋は下宿に貸している。お互いへの愛情を失いかけている二人だが、夫が会社のタイピストの女性と気持ちを通わせ始め、やがて真剣な恋へと至っていくと、妻は動揺しはじめて、、、という話。
なし崩し的に浮気するものの離婚にまでは踏み込めない夫と、気持ちが離れた夫と一緒にいることはできないと思いつつも別れる決断はできない妻。その周囲には一人で生きていく女性や夫に愛人を作られて自殺までする妻が配置されているのだが、中心の二人はずるずると現状を維持し続けていく。人物たちの気持ちの揺れ動きを細やかに追っていくと決定的な瞬間などはありえないというかのように事態はゆるゆると進行し、気づいたときにはもう決定的な瞬間は通り過ぎている。しかし、それにまったく気づかないかというと、目の前を電車が通り過ぎたり、真横を電車が通り過ぎたことを示す光の明滅があったりして、たしかに何かが起こっていることは感知できるようになっている。
大阪で夫が浮気相手と本当に関係を持ってしまった後でその連れ子と遊ぶ様子に表れるやるせなさ、妻が意を決して夫の浮気相手を訪ねて会話する時に自分で自分を煽っていく高揚感。すばらしい。
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