世界一不運なお針子の人生最悪な1日のレビュー・感想・評価
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針と糸を駆使したアイディアと描写力に感服!
これは発明的なアイディアを掛け合わせた面白い作品。一見に値する。もともとベースとなった短編の時点で、コーエン兄弟の『ノーカントリー』のような犯罪劇のシチュエーションがインスピレーションとしてあったようだが、作り手の脳内を介するとそれらが大自然に囲まれたアルプスやお針子をめぐる奇想天外なストーリーへと劇的に進化。「針と糸」を駆使した主人公の天才性の炸裂シーンたるや、ちょっとしたマーベルのスーパーヒーローを思わせるほど大胆不敵に観る者を魅了する。じっくりと時間をかけてギミックの”仕込み”を行い、溜めて溜めて、一気に解き放つ爽快感。全てがこのカタルシスのために緻密に計算され、いっさい外すことなく見事に決まっている。いかにこれを凌ぐアイディアや語り口を見つけ出せるかが今後の分かれ目となりそうだが、今はただ、20代前半という若さで本作を完成させ、我々の目と心を存分に楽しませてくれた才能を称賛したい。
今年最後の掘り出し物かも
ほぼ予備知識なしで観て、思いのほか楽しめた。鑑賞後に資料などで知ったところによると、フレディ・マクドナルド監督は19歳のときに同じ原題(Sew Torn)の短編映画を制作し、これが大いに評価され話題を呼び、コーエン兄弟の兄のほうジョエル・コーエンにも届く。ジョエルからコンタクトがあって直接会い、長編映画化を勧められたという。バイオレンス場面を乾いたユーモアも添えて描くセンスは、確かにコーエン兄弟の「ファーゴ」や「ノー・カントリー」などに通じるものがある。
マクドナルド監督は米国で生まれ育ったが、母親がスイス系であり15歳の時に家族でチューリッヒに引っ越した。そんなわけで、元の短編と同様に本作はスイスでロケを行い、アメリカ・スイス合作となっている。
主人公のお針子バーバラが車で走っていた路上で麻薬取引現場に遭遇する場面を起点とし、3つの選択肢それぞれに応じたストーリーが順に、タイムラインを繰り返す形で構成されている。3つの異なる展開を見せるという点で「ラン・ローラ・ラン」に似ているが、あちらは主人公が前のタイムラインでの失敗を回避する、半ば意識的にやり直しているニュアンスがあった。一方で本作は3つの展開が独立していてやり直しの要素はなく、その点ではグウィネス・パルトロウ主演の「スライディング・ドア」のほうが近い。
本作のオリジナルな面白さは、バーバラが幾多の難局に遭遇するたび、当意即妙で針と糸を駆使してをさまざまな仕掛けをこしらえ、切り抜けようと奮闘するところ。日本では「ピタゴラ装置」のような仕掛けという説明で伝わりそうだが、その元ネタ的な「ルーブ・ゴールドバーグ・マシン」という米国人漫画家が考案した装置があることを今回初めて知った。ともあれ、バーバラが針と糸で仕掛けを準備している段階では意図がすぐにはつかめないケースが多く、しかしひとたび仕掛けが稼働すると鮮やかな結果をもたらし、「おお、そう来たか!」と観客も驚喜する。
主演のイブ・コノリー、美人ではないが味のある顔立ちで、台詞が少ないぶん表情の演技で魅せる。取引現場を徐行しながら拳銃、重傷の男2人、トランクケースを順に目撃していくときの表情など最高! 終盤のダンス(なぜ踊るのかは観てのお楽しみ)も声を上げて笑った。
好き嫌いはあるだろうが、はまる人にははまりそう。年末年始にひしめく大作映画に埋もれそうな公開時期だが、それもまた掘り出し物感を強める一因か。
年始に観て思う・・・
人生の重要な選択は「今」よりも前にすでに決している・・・かもしれないという話
そして、その選択に、邪心や打算が入るとはおおむね悪影響、不幸を引き寄せますよという人生訓と受け止めた
「完全犯罪」「通報」「通過」の3択のすべての結末をみせてくれる中で、彼女のお裁縫(お針子)技術がほとんど説得力皆無な状態で「ピタゴラスイッチ」している流れを「ま、いっか」と受け流せられたら☆3以上は評価できる気がする
全ての局面で、彼女の糸はまるで鋼のような強靭さを持っていて且つ、瞬時に「ピタゴラスイッチ」できる超人的能力は、もはやそちらをメインテーマに映画を作ったほうがおもしろいんじゃないかと思うほどだ
自身の人生の選択(そのほとんどはそれが人生を左右する重要な選択とは気づかない)はつねに「素直に、自然に、心穏やかに、誰かを恨まず、羨まず」実行したいものだと思いつつ、今年の初詣での時、一人の若者を数人で虐めている集団に何も言えずその場を去った自身の選択にずっと後悔している 初詣していても気持ちここにあらず、帰り道にまだその若者たちがいたら今度はちゃんと止めに入ろうと思いつつも、その場所にはもう誰もいなかったことで「ホッ」としている自分にやはりもやもやしたままだ。果たして、これももしかしたら「人生の(悪いほうの)選択」ポイントだったのではないかと、映画を見た後考えている
武蔵野興業がんばれ!
善人ではない
派手さはないが佳作です
本来あり得ないものに針と糸を通していく手先がステキでした。
3つ目の選択の展開がたまらなく良かったので、まさかのもう一つの選択が出てきてシュンとなってしまいました。だって3つ目のあの先に、きっと彼女の本当の選択と成長があったはずです。
映画の中でいくつかの選択を見せられるうち、繰り返しの体験ではないのに物語が変化しながら少しずつ発展していき、それと共にバーバラの心も変化し、成長しているように見えていたので、最後に何事もなかったことになってしまったラストにシュンとしてしまいました。
ロマンチックなことや誰かの気持ちや生き死にが念頭にない主人公バーバラが、どの選択をしても結局欲しいのは今必要なお金だけなのが何だか悲しかったです。
「針と糸を駆使して人生を切り開く」と言うより「裁縫しか取り柄がないからそれしか思いつかない」バーバラ。亡くなった母親はそれしか教えなかったのだろうか。愛されていたのだろうか。そう考えると、やはりお店は燃えるべきだった。
ユニーク!
針と糸をあやつるバーバラにかんざし屋の秀と三味線屋の勇次の影を見た
え、お裁縫クライムサスペンス?? そして「古池やかわず飛び込む水の音」の1.5倍ほどの長さのある長い邦題(けっこう効果的で私はこのタイトルから興味を持ち始めたのですが)。拳銃に色とりどりの糸が巻きついているという、なんだかわけのわからないポスター•ビジュアル。おまけに、キャストも監督も知らない人ばかり…… いかにも B級感たっぷりといった感じの哀愁が漂っていた作品なのですが、意外や意外、けっこう楽しめました。
まずは主人公のお針子のバーバラがなかなかのものです。きみは客商売には向いてないねぇ、と声をかけたくなるような無愛想な感じ。この世の不運やら不幸やらを背負いこんでるようにも見えるけど、助けてあげたくなるような薄幸の美女感はまったくありません。亡くなった母親から受け継いだ裁縫店が傾きかけてるのもむべなるかなといったところ。でも、彼女、なんとなく「職人気質」みたいなものが感じられて、そこがいいんです。今はまだ経験不足だけど、いいお針子になれそうな気配があります。そして「針•糸オタク」です。針と糸を駆使して様々な仕掛けを作ってゆきます。
この針と糸というのがいいです。彼女は3度目の結婚式に臨む熟女花嫁の首に近い背中の上部を針でケガさせてしまうというミスをするのですが、もう何センチか上の首の後ろの延髄あたりに針を垂直に突き刺せば、これはもうかつての必殺シリーズの必殺技です。私が特に好きだったのは『必殺仕事人』の三田村邦彦 演ずるかんざし屋の秀です。彼の場合は針ではなくかんざしを使うのですが、金属製の突起物という点では針と一致しております。で、糸のほう。このひも状のものを巻きつけたり、引っ張ったりするというのは、同じく『必殺仕事人』に、三味線の弦を投げて相手の首に巻きつけ、その弦をどこかに引っかけて相手を宙吊りにして引っ張り上げ、指で弦を「ビン」と鳴らすと相手が絶命するという必殺技の使い手、中条きよし演ずる三味線屋の勇次がいました。で、バーバラも針と糸で必殺技を繰り出し…… までは行かないけど、いろいろと仕掛けを作ってピンチを切り抜けたり、とんでもなく優位に立ったりもします。
まあこのあたり、よくよく考えてみると「んなことあるかいっ」というおバカな展開なのですが、これがけっこう楽しいんです。実はワタクシ、ここんとこ一部の邦画のレビューで、やれ「荒唐無稽な与太話」だの「これでは観客とリアリティ•ラインが共有できない」だの、エラそうに言っておりまして、本作の比較的高い評価と比べるとダブル•スタンダードじゃないのとツッコミを入れられそうです。でも、いいんです。そっちの批判したほうは社会派エンタメとして大作然として作ってあるのに対して、こっちのほうは、はなから B級風で序盤のバーバラが最初の仕掛けを作ったあたりでリアリティ•ラインがぐーんと下がりますから。
ということで、お裁縫クライムサスペンスが出てきたからには、お掃除クライムサスペンスやお洗濯クライムサスペンスはどうだ、とかにはならないだろうとは思いますが、こういったアイデア勝負のアクションもの、次なるアイデアを楽しみに待ちたいと思います。
金の斧、銀の斧、鉄の斧、どれを選ぶか
シュールでクスッと笑える可愛い映画
ブラック・コメディとも、緊迫したスリラーとも言える傑作。
2025年の仕事納めの日、忘年会も納会もなく、一人で遠距離通勤の帰路につく前に鑑賞。
たまたま、面白い映画を観た。
キャッチコピーは「世界初の“お裁縫クライムサスペンス”登場 !」
ベースとなる短編があるらしい。
監督・脚本のフレディ・マクドナルドは2000年生まれの若者だそうだ。
ジョエル・コーエンが絶賛したからといって『ファーゴ』を引き合いに出した宣伝もチラホラ。
予備知識なしで映画館に飛び込んだので、これは帰り道でちょっと検索して得た情報。
原題“Sew Torn”(破れを繕う…という意味か?)に対してこの邦題はよく考えたとも思うが、今どき「お針子」なんていうか? そもそも彼女は世界一不運だったのか? 人生最悪な1日ではなく人生最後の1日ではないのか? とか、気にはなる。
Choices,Choices,Choices…
人生の岐路での3つの選択肢。
どれを選ぶかで運命がどのように変わるか…という物語ではない。
たどる運命は結局同じだということが先に示されていて、そこまでの過程をマルチバースで見せてくれる。
そこでは、主人公のバーバラ(イヴ・コノリー)が針と糸でピタゴラスイッチ的なカラクリを見せる。
ただ、おそらくこの仕掛けに力学的あるいは物理学的な裏付けなどなくて、彼女がいかにも天才的に針と糸を操ることができるのだと示しているだけだ。
だから仕掛けの作用はとても予測できるものではなく、荒唐無稽だが奇想天外で面白い。
張りめぐらされた糸のクローズアップ映像にキリキリという効果音を乗せた緊張状態から、その緊張から放たれた糸が弾け飛ぶ視覚的な演出が見事だ。
警官と公証人と牧師(だったかな?)を兼務する老婆が登場する。
舞台はスイスの山間の小さな町だが、時代背景はよく分からない。携帯電話は使っていたがスマホではなかった。
そんな時代の、いかに田舎町といっても、こんなヨボヨボ歩きの老婆が警官だなんて…。
ところが、この婆さんがなかなかなのだ。確か、撃たれた。撃たれたのに、すごいのだ。歩くのも銃を抜くのもおぼつかない人だったのに…!
とにかくスリリングで先読みさせない展開が秀逸だ。
三度にわたって不幸な結末を見せられているから、あのエンディングにカタルシスさえ味わえたりする。
もし教訓があるとすれば、どんなに理不尽に罵ってきた相手でもイジワルで仕返しをしようなどとは考えてはいけない…ということか。
裁縫アクション?
どれを「選択」するかで3通りの結末になるがどれも最悪。
バーバラは、アポを忘れて顧客を待たせたんだからまずはお詫びでしょうに。
ただ黙っているだけですぐ仕事に掛かろうという気配もないのでお客にきつく文句を言われても仕方なし。
これでは商売が傾くのも仕方ないかな、お針子という仕事自体、あまり需要あるとは思えないにしても。
それなのに落としたボタンを腹いせに通風口(?)にわざと落とす。
性格悪いので破滅も自業自得であまり同情できない。
でも、徐々にバーバラの事情が分かってきて、精神的に病んでいる実母のヤングケアラーで母に寄り添って店をやっていくしか選択肢がなかったことや、バーバラを子供のころから知っている老人しかいない地域事情、若者はとっくに出て行っているんでしょう、そんな環境のせいか彼女には友達がいない。気の毒にもなる。
選択肢は3つだけのようだが、実はもうひとつあって、札束の詰まったケースを持ち逃げするかどうか。実はこれが重要で、バーバラはすべて「持ち逃げする」を選択したがゆえの悲惨な結末。
なんだかなあ、と思っていたら、4番目の選択肢があった。
欲をかくとろくなことにならない、というのと、仕事は誠実に、という教訓ですね。
まとまったお金が手に入って、バーバラに店と母から決別して新しい人生に乗り出せる光が見えるラストが良かった。
裁縫道具を駆使した仕掛け、というアイデアが秀逸。ピタゴラスイッチチックで面白いし仕掛けるバーバラは仕事人みたい。針と糸ってあんなに丈夫なの?
こういうの好きだし笑えるところもあり面白かったが、繰り返しで重複するところは省略とか早回しとかなら良かった。全部見せていたので若干冗長に感じました。
フレディ・マクドナルド監督はこれが長編初監督作とは。コメディのセンス良く、粋で面白くて、スイスの美しい景色もさり気なく満喫させてくれる手腕は素晴らしい。主演のイブ・コノリーも熱演。可愛いし。監督もコノリーさんも今後が楽しみです。
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