しあわせな選択のレビュー・感想・評価
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ラストの映像で主人公の選択が「無駄骨」だと知る。
ドナルド・E.ウェストレイク原作の「斧」や先に映画化したコスタ=ガヴラス監督の「Le Couperet」とは一線を画した作品。
何が違うって、風刺の効いたブラックコメディ色が強い点。
それが本作にとって効果的な味となっておりました。
特にイ・ビョンホンに驚愕!
あんなにも滑稽な演技ができるとは思いもしませんでした。
とにかく巧い!
殺しに不慣れで転んだり、慌てたり…笑
そして驚くべき事にドタバタするビョンホンを見ていて笑えるというのに彼から伝わってくる緊張感が尋常じゃない。
観る者を不安にさせる表情が物凄い!
私はこういった「笑えるのにハラハラ出来る作品」を目にした記憶がありません。
この落差は他の作品では味わえないと思います。
そしてエンディング。
終幕で流れるある映像により主人公の選択が「無駄骨」に終わっている事に気付かされます。
当の本人はガッツポーズを取って喜んでいるんですが、観客にはそれが間違いである事が分かってしまいます。
この風刺に満ちた締め括りが作品の魅力を更に高めておりました。
間違いなく深掘り出来る作品になってます。
勝ち抜きか、降伏か
犬がかわいい映画は名作
リストラされたサラリーマンが家庭を守るため、ライバルを(物理的に)蹴落としていく風刺ブラックコメディ。
イ・ビョンホンの情けなくてみっともない演技が素晴らしい!アレの匂いを必死に嗅ぐ演技、最高でした。
脇を固めるソン・イェジン、イ・ソンミン、ヨム・ヘランの演技も特に素晴らしい。
特にヨム・ヘランが良かった…!!
青龍映画賞で多数の賞を受賞したのも納得。
行き当たりばったりな計画で全然うまくいかない上、どんどん良くない方向に転がり落ちていくのに、この男はどこへ着地するのだろうと緊張感たっぷりで最後まで見られました。
緻密な脚本、編集、カメラワークのおかげだと思います。
ちなみに、社会をシニカルに見つめたブラックコメディなので、フルスロットルで突き抜けた残酷さとか爽快感とかそういうのはないです。
編集のスピード感に注目。
大手製紙会社に半生を捧げてきた男。広壮な邸宅・美しい妻と子供たち・趣味の温室と、望むものをすべて手に入れた。ところが会社がアメリカ企業に買収されると突然解雇、収入を立たれた家族は一気に倹約生活へ転落する。男は血相を変えて再就職をめざすが、経験を活かせる製紙会社での採用面接は、同じく解雇された同世代の男たちに先を越されてしまう。そして生活の中心にあった自宅の競売が迫るなか、男はライバルたちが姿を消せば自分にポストが回ってくると思いつき…。
なんといっても編集のスピード感がすばらしく、2時間半をほとんどノンストップで駆け抜ける。そのリズムを支える、現代韓国映画ならではの緻密なクレーンショットや照明・色彩の完璧なコントロール。これは『パラサイト』が再来したかのようなハイスピードのダークコメディで、テクニカルには一部でそれを上回っている。
イ・ビョンホンの意外なコメディアンぶりをたっぷり堪能できる作品でもあって、物語が時としてグロテスクで、本来それほど共感できるはずのない登場人物なのに、映画がリアリティを失っていないのは、彼の大きな功績だと思う。
映画は終盤にさしかかるまで全速力で進むんだけど、この行き当たりばったりな男の行方を、いったいどうやって決着させるんだろう…とだんだん不安になってくる。ところがエンディングに至って余韻たっぷりの見事な着地が用意されて、ここで観客はさらに舌を巻く。そして見終わったあと、伏線の回収、音楽を使った高精度の編集テクニック、物語の全体、何よりも映画の題名が、ある種の社会批評につながっていることにも思い至ることになる。あっぱれ。
韓国の今年のアカデミー賞候補エントリー作でもあって、テクニカルには受賞しても全くおかしくない。しかしどこかで『パラサイト』を連想してしまうのは避けがたく、今年はブラジルやデンマーク、イランの候補作に強敵があって、そこはパク・チャヌク監督の不幸なところ。もう、こういうのは巡り合わせみたいなものだ。
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