シネマ歌舞伎 歌舞伎NEXT 朧の森に棲む鬼 松也版のレビュー・感想・評価
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幸四郎版とは全く違う仕上がりで素晴らしいのひとこと
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人間が鬼になっていく、その途中を見せられる
同じ『朧の森に棲む鬼』でも、松也版はまったく別の物語に見えた。
幸四郎版が「完成された鬼」の物語だとしたら、
松也版は「人間が鬼になっていく過程」を描いた舞台だったと思う。
松也のライは、最初から悪ではない。
嘘を武器にしているようにも見えない。
咄嗟の機転で言葉を選び、結果として嘘になってしまう――
そんな危うさを持った人間に見える。
転機は、検非違使に侮辱され、暴力を受け、
「ありがとうございます」と言わされる場面。
あの瞬間から、
「誰からもこんな扱いをされない場所に立つ」
と、静かに決めてしまったように感じた。
王になりたいという欲は、
権力や富のためではなく、尊厳を守るためだった。
物語の後半、嘘は完全に「武器」へと変わっていく。
それは堕落というより、
分かってしまった人間が選び続けた結果に見える。
キンタの役割も印象的だった。
この版では、ライを「討つ」のではなく、
引導を渡すように、祈るように剣を振るう。
断罪ではなく、解放。
善と悪、因果応報で割り切れる話ではない。
人が生きていく中で、
うっかり踏み込み、流され、
気づけば鬼になってしまう――
その苦しさを突きつけられる。
「面白かった」で終われない、
悲しくて、重たい余韻の残る舞台だった。
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