「死ぬほど不幸で死ぬほど幸福な世界」ひゃくえむ。 なさんの映画レビュー(感想・評価)
死ぬほど不幸で死ぬほど幸福な世界
学生時代陸上競技(私は長距離だった)に魅せられて、甘い蜜をたくさん吸わせてもらって、だからこそ苦しんだ5年間を思い出した。本作も同様に、良すぎて苦しい。
現役時代、自分にバケモノみたいに才能があれば違ったのに、もっと上に行けたのに、と思っていた。けど違った。いざ才能があればあるほど、あるからこそ、私がそうだった以上に苦しめられてしまうんだ。海堂もトガシも小宮もみんな、それぞれ陸上競技に対する思いは違えど、幸福と不幸を同時に味わっていた。
トガシみたいに才能があってもあんなに心壊されてしまうんだと分かったし、僭越ながら私もトガシみたいに夢中で走れば走るほどタイムが上がっていく喜びと、何をしても結果が出なくて自分より遅い相手に抜かれてしまう悔しさを知っているからこそ、公園のシーンではトガシと一緒に狂ったように泣いた(多分あの時の私とトガシはシンクロ率200%越えてた)。
ただひとつ、長距離だと幸せや不幸を味わえる時間が短距離に比べて圧倒的に長い。だから同じ陸上競技といえど、短距離の世界の全ては分からない。
短距離、100mというたった10秒にこんなに苦しめられる人生って、死ぬほど不幸で、けどそれが死ぬほど幸福なんだろうな。
作品全体で言えば、文学的な作品だなと思った。こうすべてをまるっと伝える感じではなく、情緒的にカットしていく感じ。この頃は集英社系の作品に慣れていたから、講談社の作品が新鮮だったのかもしれない。あと個人的には眉毛の描き方が気になりすぎた。あんな眉毛の人が実在してたらこわいよ…(笑)
(それにしても今日行った映画館、めちゃめちゃ手作り感強くて新鮮だったなあ…笑)
