是枝裕和監督×出口夏希×蒔田彩珠、三者三様の「背中を見て影響を受けた存在」【「ルックバック」インタビュー】
2026年9月12日 10:00
是枝裕和が監督・脚本・編集を務め、藤本タツキ氏の人気漫画を実写映画化する「ルックバック」が公開された。主演した出口夏希と蒔田彩珠は、秋田県にかほ市を中心に撮影をした今作で何を得たのか――。是枝監督、出口、蒔田に三者三様の思いを聞いた。(取材・文/映画.com編集長 大塚史貴、写真/間庭裕基)
第83回ベネチア国際映画祭コンペティション部門に選出された今作は、漫画の腕に絶対の自信を持つ藤野(出口/子ども時代:七瀬ふうり)と、彼女に憧れを抱きながらも圧倒的な画力を秘めた京本(蒔田/子ども時代:岡田六花)が主人公。漫画へのひたむきな思いで結ばれたふたりをある日、思いもよらない出来事が襲う。原作と同様に、小学生時代から始まるふたりの13年間の軌跡を、移ろう四季とともに繊細かつみずみずしく描いている。

今作のプロデューサーを務める小出大樹氏は、早稲田大学在学中に是枝監督に師事。いわば是枝門下生といえるが、是枝監督自身は小出氏から「オファーを受けた」という記憶はないという。
©藤本タツキ/集英社 ©2026 K2 Pictures・集英社
穏やかな表情で話す是枝監督だが、公式コメントでは「これをやらないわけにはいかない」と覚悟を決めたことを明かしている。ここまで惹きつけられた最大の要因はどこにあるのだろうか。

出口と蒔田にとっては、Netflixシリーズ「舞妓さんちのまかないさん」以来の是枝組となった。今作の現場では藤野と京本として、どのように距離を縮めていったのか聞いてみた。


©藤本タツキ/集英社 ©2026 K2 Pictures・集英社ほのぼのとしたやり取りが続いたが、幾つもの意味が込められた「ルックバック」というタイトルについて、3人に思いを馳せてもらった。作画担当として背景を描き続けてきた京本の役割に焦点を当てて考えることは容易にできるほか、互いの背中を見て影響を受け、刺激を受けて成長しあう意味合いをより強く感じることができる。3人にとって、「背中を見て刺激を受け、切磋琢磨できるような存在」はいたのだろうか。

©藤本タツキ/集英社 ©2026 K2 Pictures・集英社今作は派手なアクションがあるわけではないが、ラージフォーマット、もしくは可能な限り音響に秀でたスクリーンで鑑賞することをオススメする。それは、藤野と京本が描くペンのタッチが心地よく、それでいて音の変化が2人の心情を雄弁に物語っているからだ。最初は1人で描いていた音が2人になることで躍動感を伴うようになり、再び1人になったかと思えばデジタルのタッチへと移行する。これは原作では描くことができない部分で、映画ならではの余韻を一心に浴びることができる。
さらに、原作では描かれていないけれど、確かにあったであろう余白も描かれており、それが観る者に無上の喜びを不意に届けてくれる。藤野の母(野呂佳代)が帰宅した娘に「ねえ、音はしないけど(京本が部屋に)いるんだよね?」と確認するくだりや、手を10回こすって耳に持っていくと海の音がする……というシーンなど、挙げればきりがない。実際に作品世界を生きた出口と蒔田は、メガホンをとった是枝監督は、理屈抜きに心惹かれるシーンとしてどこを挙げるのか興味が沸いた。




©藤本タツキ/集英社 ©2026 K2 Pictures・集英社執筆者紹介
大塚史貴 (おおつか・ふみたか)
映画.com編集長。1976年生まれ、神奈川県出身。出版社やハリウッドのエンタメ業界紙の日本版「Variety Japan」を経て、2009年から映画.com編集部に所属。規模の大小を問わず、数多くの邦画作品の撮影現場を取材し、日本映画プロフェッショナル大賞選考委員を務める。2026年2月から映画.com編集長に就任。
Twitter:@com56362672
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