ブレンダン・フレイザーにとって良い俳優&演技とは? オール日本ロケで生じた“第二の故郷”という感覚【「レンタル・ファミリー」インタビュー】
2026年3月1日 11:00

「ザ・ホエール」で第95回アカデミー賞最優秀主演男優賞に輝いたブレンダン・フレイザー。30代前半から主演した「ハムナプトラ」シリーズで世界的人気を獲得するも、その後の一時期、ハリウッドの表舞台と距離を置いていたが、ここ数年、出演作をじっくりと選びながら、先述の「ザ・ホエール」に「キラーズ・オブ・ザ・フラワー・ムーン」など話題作への出演が続く。
そんな彼を主演に迎え、日本人監督HIKARIの下で、オール日本ロケで制作されたのが「レンタル・ファミリー」(公開中)である。フレイザーが演じるのは、かつて日本で歯磨き粉のCMに出演し一世を風靡し、そのまま日本を拠点に活動するも、自分を見失いかけているアメリカ人俳優。 “レンタルファミリー”会社の一員として、依頼人の要望に応じて様々な役を演じることになるのだが……。
来日したフレイザーに直撃し、本作の“裏話”を聞いた。(取材・文・撮影/黒豆直樹)
(C)2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.「家族をレンタルする」ってどういうことだ? と思いました。レンタルがあるなら、“Purchase(購入)”や“Sell(販売)”、“lease(リース)”もありうるのかとかいろいろ考えたんだけど(笑)、何よりも自分の中で好奇心が勝りました。これはすごく重要なことなんですけど、私たちは生まれてきて手にした家族ではない、人生の中で、自分で見つけていく家族と出会うということもあるんです。
(C)2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.ひとつ言っておくと、彼はあまり上手とは言えない大根役者だからね(笑)。あまり政治的なことは言いたくないけど、この7~8年、「アメリカにいたくない」という、アメリカで暮らす“少なくない人が感じている気持ち”は理解できました。
彼は日本では“アウトサイダー”と言える存在ですが、新しい場所に身を置いて、そこで生き残るために慣れていかなくてはならないという感覚には共感を覚えました。というのも僕自身、小さい頃から3~4年ごとに引っ越しを経験していて、常に新しい学校や環境に順応しないといけなかったんです。面白いことに多くの俳優が、同じような経験をしているし、そもそも俳優という職業自体、常に新しい場所で自分自身をRe: Invention(再発見)していくものと言えると思います。

さっきは彼のことを“大根役者”と言ったけど(笑)、この仕事に就くことで、彼は自分がこの仕事をするのがすごく上手なんだと気づいていきます。誰かの“フリ”をするのをやめた瞬間、彼はすごく良い役者になるわけです。そして、人々との出会いを通じて気づくんです。自分の内側に目を向ければ、ずっと足りていたということ――足りないものなんてなかったんだということに。
常に発見はあります。役作りの中で私が一番楽しく感じるのはリサーチの過程です。今回も役を演じていく中で、監督や柄本(明)さん、(山本)真理さん、平(岳大)さんたちと出会い、家族の一員となったような感覚を味わいました。“Art imitates life.”――「人生をアートが模倣する」という言葉がありますが、まさにその通りで、日本という場所が、これから自分がいつでも戻って来られる場所、自分にとって第二の故郷と言える場所になった気がしました。この感覚は、これまで参加した全ての作品で必ずしも感じられるものではなく、この作品だからこそ「自分がここに帰属している」という感覚を強く得られたのだと思います。
(C)2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.難しい質問ですが、頑張って答えてみましょう(笑)。(ポスターに映る美亜役のゴーマン シャノン眞陽を指して)彼女は撮影の時は9歳でしたが、彼女が才能あふれる女優であることは誰しもわかると思います。「才能とは何か?」と聞かれても、難しいですが、(その人の演技を)見ればわかります。それは天から贈られたギフトであり、人によっては“呪い”となってしまうものかもしれません。でも、それがあるからこそ、人々はその人に注目するし、それがモチベーションにもなるわけです。そういう人を見て、人々は「良い役者だ」と言いますが、その評価は時間と共に変わっていくものですし、作品によっても変わります。そこで終わりではなく、さらに成長する可能性もあります。
(C)2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.僕自身、才能とは贈り物だと思っていて、そこには“責任”が付随してくるものだと思っています。だからこそ、俳優としてどの企画に参加するのか?という点は、非常に大事な部分だと思っています。どの作品に出演するかで自分自身も変わるし、もっと言うならば、観る側の人々も変わってほしいと願っています。私自身、観客として映画を観る際は、常に学びを求めています。それは単に学術的な意味ではなく、映画を通して旅をしているような経験をしたいと思っているんです。答えになっているかわかりませんが、良い役者であるために「賢く選択する」ということが非常に大切なことだと思っています。

たしかにこの作品でも、モラル的なことに関して言うと「子どもに対してそんなディープな嘘をついていいのか?」という描写もありますよね。そこはリスクと報酬(=効果)というもののバランスを測ることが大事だと思います。
フィリップは、美亜に対して“父親”として接し、一緒に遊んだり、出かけたりします。もちろんフィリップ自身はそれが“フェイク”であることは自覚していますが、どこかに“真実”がなければ、決して効果は生まれないと思います。とはいえ、平さんが演じたキャラクターを見てもわかりますが、パーソナルな部分に入り込み過ぎると、そこには危うさもあるわけです。やがて、それが“フリ”であることに向き合わなくてはならない瞬間が訪れるわけですが、バランスを見極めて、短い期間であれば、良いことと言えるのかもしれません。
欧米であれば、セラピストがその役割を担うのでしょうが、欧米と比べて日本では、人々が心の内に関して、表立って話をする機会が少ないということはあるのかもしれません。プロセスは違えども、そこで同じような癒しや救いを人々は得ていると言えます。
もちろん、アートにもそうした役割はあって、役者という存在が役を通してみなさんが求めているものを示し、満たすという部分はあると思います。とはいえ、作品としての面白さと、観る人の心に触れるような効果を両立できる作品というのは稀な存在だと思うし、この「レンタル・ファミリー」という映画はそれができている1本なのではないかと思っています。
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