未来のレビュー・感想・評価
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ミステリと思うなかれ
原作は湊かなえがデビュー10周年に発表した集大成的小説であり、作家のファンはもちろん、主要な映像化作品を知る観客でも、過去作の特徴的な物語要素がセルフオマージュ的に反復されていることに気づくはず。たとえば「告白」での生徒から教師に向けられる残酷な悪意、「望郷」での地方の子供が抱くテーマパークへの憧れ、「ポイズンドーター・ホーリーマザー」での毒親と殺意などなど。
“ミステリードラマ”と一応謳われているが、謎解き要素に期待しすぎると拍子抜けするかも。なにしろ表向きのミステリー要素といえば、父親と死別した10歳の章子(山﨑七海)に届く20年後の自分からの手紙。しかも、未来からの手紙である証拠として添えられたのが、現在10周年を迎えたアトラクションの「30周年」を記念する栞(しおり)、それだけなのだ。そんな子供だましで未来からの証拠だなんて、と大人の観客なら疑って当然。湊かなえがファンタジー設定を用いない作家だと知っていればなおさら、章子を気遣う身近な人物が書いたと察しがつく(仮にこれが辻村深月などファンタジックな仕掛けも用いる作家の物語なら、本当に未来の自分から届いた手紙の可能性も考慮すべきだが)。
物語の重心はむしろ、世代を超えて繰り返される虐待や搾取に置かれる。子供を虐待する大人。女性を性的に搾取する男。学校でのいじめ。悪いことだと誰もが知っているのに、何十年経ってもなくならないのはなぜなのか。それこそが本作の、そして現代社会の深刻な“謎”なのかもしれない。
章子役の山﨑七海は2023年の「渇水」から注目していて、映画「海辺へ行く道」やドラマ「宙わたる教室」では出番が少なく物足りなかったが、成長して演技の幅を広げてきたことを本作で確認できたのは嬉しい。ただ、現在17歳、役者としてまだ発展途上ではある。たとえば、重要なメッセージが込められたあの“叫ぶ”シーン。重大なことを実行したあとで、怒りや悲しみ、後悔や自責の念を抱きつつ、絶望の際で踏みとどまって助けを求める懸命な訴えであるはずなのに、表情に必死さや深刻さが足りず、悲痛であるはずの叫びがどこか軽く見えてしまう(このシーンでは親友の亜里沙役・野澤しおりの叫びのほうが真に迫っていた)。悲しみや怒りなどの強い感情の表現の未熟さは、実年齢ゆえの人生経験の不足を思えば仕方ないところもある。この先もっと映画や演劇から強い感情描写を学び、さらに小説などを読み実体験のない深い悲しみや強い怒りといった心理状態を想像することを着実に積み重ねて、演者としての表現力を高めていくことを期待する。
瀬々敬久監督の近作では、「楽園」(2019)や「護られなかった者たちへ」(2021)が重いメッセージ性も含めお気に入りだった。これらの傑作に比べると、本作は陰惨なエピソードが多い割に、未来へのかすかな希望でそうした暗さが緩和され、重いテーマにしては軽い仕上がりになった印象だ。
ミステリー?
最初は30年後の自分から手紙が届くと言う設定に最近流行りの少し不思...
クソだらけの世界
湊かなえ作品になっている、監督・脚本はがんばった。
湊かなえ作品といえば、各章が独立した物語でありながら終章で有機的につながり
そうだったのかという驚き、人間関係・イベントの時系列を操る設計図の巧みさ。
遡って前章を読み直すこともしばしばのまさにイヤミスの女王だと思います。
これを2時間少しの映画に落とすことはさぞ大変だったろうなと思うが、本作は
湊かなえのテイストがちゃんと出ていた。(撮ったが時間的に切ったシーンもたく
さんあっただろうな想像)
指摘したくなる部分はあるが、国宝並みに3時間弱まで延長したとて、大幅な改善
には繋がらないだろうとも思う。アマプラの人間標本みたいにどこかのサブスクに
企画を通してもらえれば全員ハッピーになれたのにと思う。
またこれは大ヒットしない映画だということもよく判り、ぎゅっとすれば45分位
でいいだろうという福〇監督の作品群のようにライト層の選択肢にはならないなあ
と思った次第です。
物語の流れが
最後にまとまって話がつながる流れなのでしょうけど
ややこしすぎて、もう一度見ないとわからない設定なのですが、
もう一度観たいとも思えません
ただただ訳わからない内容です
そして後味も悪い作品です
ハマる人にはいいでしょうけど
2時間強に収めた脚本に無理がある
1. 瀬々敬久監督との相性
❶1960年生れの瀬々敬久は、高校時代からビデオを撮り始め、京都大学文学部哲学科に入学後は、映画部に入部し、16㎜で自主映画を制作監督していた。卒業後は独立プロに所属し、ピンク映画の助監督を務めながら経験を積み、『課外授業 暴行(1989)』で商業映画デビュー。この時代は佐藤寿保、サトウトシキ、佐野和宏とともに、「ピンク四天王」と呼ばれた(Wikipedia)。この時代のことは全く知らない。
❷瀬々の長編劇映画監督作品と初めて対面したのは、『泪壺(2007)』で好印象を持った。
❸次に出会った『感染列島(2008)』は、時代を先取りした傑作で、マークするようになった。
❹その後は、本作に至るまで、合計20本をリアルタイムで観ているが、相性は良いと言える。
❺マイベストは『64 ロクヨン 前編(2016)』、マイワーストは本作。
2. マイレビュー:◆◆◆ネタバレ注意
❶相性:中。
❷時代:
2024年9月の奈良県桜井市から幕が開き、直ぐ5年前の2019年となり、その後は2012年東京⇒2020年桜井⇒2022年桜井⇒2013年東京⇒2022年桜井⇒1999年三重・鳥羽⇒2024年桜井⇒1999年桜井⇒2024年桜井⇒1999年桜井⇒2024年桜井⇒2014年桜井⇒2018年桜井⇒2019年桜井と、頻繁に輻輳し、ラストは2024年で幕を閉じる。
❸舞台:奈良・桜井市、東京、三重・鳥羽市、他。
❹主な登場人物
【現在】
①篠宮真唯子(しのみや・まいこ)(黒島結菜):小学校教師。複雑な家庭環境で育ちながらも、祖母の願いであった教師になる夢を叶えた。過酷な環境に置かれている教え子に手を差し伸べようとするが、大学時代に出演したアダルト向けカラオケ映像が生徒の保護者に分かり、退職に追い込まれる。
②佐伯章子(さえき・あきこ)(山﨑七海):真唯子の教え子で10歳。大好きな父・良太が病死し、ショックで心を閉ざした母・文乃を支えながら懸命に生きているが、学校では同級生から屈辱的ないじめを受ける。母・文乃の新しい愛人・早坂誠司からは激しいDVを受ける。ある日一通の手紙が届く。差出人は「20年後のあなた(30歳の章子)」。手紙には「未来は希望に満ちている」と書かれていた。
③佐伯良太(さえき・りょうた)(松坂桃李):章子の父。章子が10歳の時に病気で亡くなる。
④佐伯文乃(さえき・あやの)(北川景子):章子の母。世の中に対して心を閉ざしている。
⑤須山亜里沙(すやま・ありさ)(野澤しおり):章子の唯一の親友。父・須山は、早坂誠司の友人。弟・健斗と共に、父親から虐待を受け、健斗は自殺する。
⑥原田勇輝(はらだ・ゆうき)(坂東龍汰):真唯子と同じアパートに住む映写技師。真唯子と恋愛関係になる。
⑦早坂誠司(はやさか・せいじ)(玉置玲央):文乃の新しい愛人。フランスで修行した副シェフ。フランス料理店を開業し、文乃と章子を同居させるが、店が破綻し、文乃に売春させ、章子にDVを振るう。美少年を好む性癖がある。
【過去】
⑧樋口良太(ひぐち・りょうた)(細田佳央太):真珠に好意を抱く高校3年生。後の佐伯良太。
⑨森本真珠(もりもと・まじゅ)(近藤華):良太と同じ高校に通う高校2年生。後の佐伯文乃。
⑩森本総一郎(もりもと・そういちろう)(吹越満):真珠の父親。県会議員。息子が事故死するが、その責任を責められた妻も自殺すると、娘の真珠に暴力を振るい、傷つける。
❺考察:ロジックに沿った概要
★映画では、2024年を起点&終点とし、1999年までの過去の幾つかの年代の25年間を何度も往来する複雑な構成になっているが、ここではそれを一旦解体し、時系順にロジックに沿って再構築した。
①篠宮真唯子
ⓐ祖母の仕送りを受け、教師になるべく東京の大学で学んでいたが、祖母が亡くなったので、ファミレスのアルバイトの他、アダルト・カラオケの動画に出演して学費と生活費を稼いでいる。
ⓑ同じアパートに住む映写技師・原田勇輝と恋愛関係になる。
ⓒ卒業後、奈良県桜井市の小学教諭となり、公正に生徒を指導するが、大学時代のカラオケ映像が生徒の保護者に見つかり、退職に追い込まれる。
②佐伯章子
ⓐ真唯子の教え子で10歳の小学生。大好きな父・良太が病死し、ショックで心を閉ざした母・文乃を支えながら懸命に生きている。
ⓑ学校では同級生から屈辱的ないじめを受け、文乃の新しい愛人・早坂からは激しいDVを受けている。
③章子の父・良太と母・文乃:フロッピーディスクに隠された衝撃の真実
ⓐ章子は、亡き父が遺したフロッピーディスクを再生し、両親の衝撃的な過去を知る。
ⓑ高校生だった樋口良太は、不良仲間の森本総一郎にそそのかされ、少女を衝動的にレイプしてしまう。その少女こそが、高校生だった森本真珠であり、後の文乃だったのだ。そして、生まれた子が章子だったのだ。
ⓒ良太は罪の意識から真珠を救い出すべき、真珠と共謀して、父・森本のウィスキーにタバコのニコチンの毒を混ぜて殺すことを計画する。真珠が毒を混ぜ、良太が放火する役割だった。
ⓓ計画通り、森本は亡くなり、良太が火の海の中から真珠を救い出すが、二人共未成年で、事件がうやむやとなり、誰も罪に問われなかった。
ⓔ数年後、真珠はデリヘル嬢となっていた。そこで良太が彼女を指名したことで二人は再会する。その後、二人は誰も知らない土地へ移り、名前を佐伯良太と佐伯文乃に変えて結婚する。
④「20年後のわたし」からの手紙
ⓐ章子に一通の手紙が届く。差出人は「20年後のあなた(30歳の章子)」。手紙には「未来は希望に満ちている」と書かれていた。
ⓑ章子は、これを奇跡だと信じ、未来の自分へ返事を書き始める。住所が分からないので、自分のノートに書き綴る。
⑤須山亜里沙
ⓐ章子の同級生で唯一の親友。
ⓑ父・須山は、章子の母の愛人・早坂の友人。
ⓒ弟・健斗と共に、父親から虐待を受けていて、健斗は自殺する。
ⓓ章子、亜里沙、健斗の夢は東京のドリームランドに行くことだった。
⑥章子と亜里沙
ⓐ精神的に追い詰められた章子と亜里沙は、親&愛人を殺して、その後二人でドリームランドに行くことを画策する。
ⓑ当日、章子は文乃を買い物に追い出し、早坂に毒入りのウイスキーを飲ませて、家に火をつける。そこへ文乃が帰ってくる。文乃は、すべてを察して、章子を咎めずに逃がす。
ⓒ文乃は炎の中に残り、早坂と共に死ぬことを選ぶ。
ⓓ章子と亜里沙はドリームランド行きの夜行バスで合流するが、亜里沙は、父を殺せなかったことを告げる。「父を殺してしまったら、大嫌いな父と同じ怪物になってしまう」との理性が働いたためだった。
ⓔバスがドリームランドに到着するが、二人は入場しなかった。現実と向き合って前へ進む選択をしたためだった。助けてくれる大人がいる筈だと、悲しみの先に希望の持てる未来があることを信じようと決意したためだった。
⑦真唯子と章子
ⓐ章子に届いていた「20年後のわたし」からの手紙は、未来から届いたものではなかった。それは、父・良太が死の直前に、真唯子の恋人の原田勇輝に「自分が死んだら、章子に幸せな未来が待っているという手紙を書いてほしい」と託したものだった。それを引き継いだ真唯子が、章子を絶望から救うために、「未来の章子」として書いたものだった。
ⓑ本作のオープニングは、章子と亜里沙が事件を起こして夜行バスでに乗り込むシーンから始まる。それに気づいた真唯子が、必死で追いかけるが、あと一歩で追いつけなかった。しかし、真唯子が差し伸べようとした「大人の助けの可能性を示唆している。
ⓒそして、ラストでは、少年院に収容されている章子に真唯子が面会する。そこで真唯子は章子を優しく抱きしめる。納得のエンディングである。
❻まとめ
①ミステリードラマとしては、比較的シンプルである。決して複雑で難解な話ではない。
②でも、本作のように、時系列を頻繁に輻輳させる描き方は、緊張が途絶えて、イライラする。
③原作の全てを130分の映画に織り込むことは不可能なので、脚色して要点をアピールすることが必要なことは理解する。だから、テロップで年代と場所を示しているのだと思う。しかし、本作のように頻繁にやられると、観客の緊張が途切れてしまい、密度が薄っぺらく感じられた。
④一本の映画に全てを織り込もうとした結果、テロップによる説明が増え、個々のエピソードと全体の重みが損なわれる結果になってしまったのだと思う。
④2007年以降、瀬々敬久監督の作品は大部分をリアルタイムで観ていて相性が良かったのだが、本作は残念ながらワーストだった。
⑤原作は未読だが、どんな構成になっているのだろうか?そんな疑問を持ったので、Google-AIに聞いてみた。以下はその答えである。
ⓐ映画版は、25年間の幾つもの時代をパズルのように頻繁に行き来する構成になっている。
ⓑ一方、原作小説は、「章ごと」に語り手と時間軸が明確に区切られた、湊かなえ作品特有の多視点モノローグ形式になっている。
㋑第1章(章子の章):10歳から14歳までの章子が、未来の自分に宛てて書き続けた「手紙(日記)」の形式で進行する。
㋺中盤の各エピソード:友人・亜里沙の過酷な現状、元担任教師・真唯子の過去、章子の両親(良太と文乃)の若き日の物語が、それぞれの視点から語られる。
⑥原作は章を読み進めるごとに、過去の秘密やバラバラだった点と点が立体的に繋がっていくという読書体験になっているのに対し、映画版はこれを130分に落とし込むため、スピード感を持って同時並行・輻輳する構成へと大胆に脚色されているが、その反面、密度が薄っぺらくなってしまったように感じられた。
⑦本作は重要なテーマを扱っているので、2016年の『64 ロクヨン』のように前・後編に分けるか、或いは、2010年の『ヘヴンズ ストーリー』〔278分〕』や、2018年の『菊とギロチン』〔189分〕 のように3時間~4時間の大長編にすれば、文句のない傑作になったかも知れないのに、そうしなかったのは、映画ビジネスとしての経営上の理由があったためと思われる。
⑦作り手(監督、脚本家他)は、誇れる作品を生み出すべく全力投球していることに疑いはない。でも、実際には、与えられた条件が希望に沿うことは稀であり、不十分な環境下で、いかにして、自分たちの個性を生かす工夫をするかが成否の境界にる。
⑧本作は、作り手の狙いが、私の期待とは合わなかったのだと思う。
⑨これに懲りず、今後も瀬々敬久をフォローしていきたいと思う。
生々しい描写の連続
不幸なシーンがずっと続き、幸せが訪れるのかという期待はずっと裏切られ続けた
特に生々しいリアルな描写・演出が上手だったため、観賞中はどんどん気が重くなった
誰かにお勧めしたい作品かと聞かれたら、知人には決してお勧めしないように思うが、好きな人は好きという作品なのかもしれない
全員圧巻
事前知識無しで見ました!
なんというか、、胸にぐさっと刺さります。
出てくる登場人物ほぼ全員が悪すぎて苦しくなりました。
正直、北川景子さんが全て持っていった感。
オンとオフの切り替えのお芝居がお上手。
新しい北川景子さんを観た感覚かも。
子役の方々のお芝居もお上手すぎた。
近藤華さんは纏ってるオーラ然りそれにしか見えなかったし、山﨑七海さんも野澤しおりさんも素敵だったなぁ。
北川景子さんと山﨑七海さんの最後のシーンは苦しくて苦しくて、お母さんがお母さんでよかったって最後の最後で思わされた。あそこは感動して今でも思い返すと涙出そう(泣)(泣)
んーー、あとは、、黒島結菜ちゃん、、、、、
夏目アラタのお芝居がエグかったから今回比べてしまった…ああいうどこかぶっ壊れたキャラクターのほうが合うのかな。
いや、わかるよ、自分と境遇が近くて助け船を出したのはものすごくわかるの。でも、なんでそこまで?って思っちゃった。
あきこ目線、助けてくれなくていい、ついてこないでって本気で思ってしまいそう、お節介にも見えてしまった。
でも、助けようとしてくれる人が一人しかいない世界でそれすらも嫌だって投げ出したら、どう生きていくべきなんだろう、とも感じちゃって。
そう思うと、自分ってすごく恵まれているんだなって思わされた。助けてくれる人に対してお節介なんて感情が芽生えたから。
時系列シャッフル
無いわぁ…
スタートは未来からの手紙でお、良いんじゃない♪とワクワクするのですが、、、
いろいろとクズオトナが出てくるのはいいとして…というか、そのクズっぷりもちよっと薄い小悪党ばかり。
夏目アラタで良くなったと思っていた黒島結菜さんは、今回も絶対ココ!!泣く筈、泣かないとオカシイ!!って場面で全く涙ナシ。ん〜ちむどんどんに逆戻りしてもうた。
でも、いちばん無いわぁ…なのは…作中イキナリ差し込まれた話しでナニナニって思ってたら、そう繋がるの〜え〜〜〜……こんな有名な俳優さんがこんな有名な俳優さんに…力技が過ぎてますよ、無理やりすぎます。
結局、北川景子に全部持っていかれた感がありました。学校でのイジメは個人的に嫌いなのでノーコメントで。
ダークサイドをみせられた
不幸をかき集めても
20年後の章子はドリームランドで楽しめたか?
湊かなえによる原作を以前audibleで聞いてとても面白かったので、映画化されたら観たいなと思っていました。篠宮真唯子役の黒島結菜が主演で、父親を亡くした佐伯章子(真木ことか→山﨑七海)と「20年後の章子」との文通を絡めた、いじめや虐待などの陰惨な境遇に置かれた少女の物語です。
佐伯章子役の二人とその友人須山亜里沙役の野澤しおりは、容姿だけでなく演技も素晴らしく、これからも活躍すると思います。亜里沙が啖呵を切るところは、本当に胸がすかっとしました。
佐伯章子の父親である良太役の松坂桃李は、いかにも病身といった風貌で、相当絞った感じです。高校時代を演じるのは細田佳央太ですが、これはあまり似ていない。一方、OFFのときには人形のようになるという母親である文乃役は北川景子ですが、これは本当に適役。『ナイトフラワー』ではいまいち役と合わないと思いましたが、この映画は助演女優賞ものです。高校時代を演じるのは近藤華ですが、これもあまり似ていない。
良太の後釜に居座る、ろくでもない早坂誠司役は、2024年の大河ドラマ『光る君へ』でまひろの母親を殺める藤原道兼を演じた玉置玲央で、その他、出てくる大人の男は本当にどうしようもないやつばかり。「世の中そんなにひどくないぞー」と叫びたくなりました。でも、最後のシーンで、少し救われました。
刑事役で、推しの木竜麻生が出てきたのには驚きましたが、ちょい役ですごい人たちが出てきてます。
「ふしめん」が食べたくなる映画です。
それでも、ことばを信じる
「手紙」がキーワードとなり、二人の名前が「文章」になるように、というクライマックスシーンが印象的だった。
とにかく、大量に「駄目な人」が出てくる。
無闇矢鱈に高いプライドを制御できず、嫉妬のために主人公をいじめる同級生。親友の父親は相手がどれほど傷つくかもわかっていずに、暴力を繰り返し、カネの誘惑に負け、我が子を自殺に追い込む。主人公の義理の父親も無駄にプライドが高く、強いものにはペコペコするが、弱いものにはその傷ついたプライドを補うべく、全ての責任を転嫁して暴力を振るい続ける。そのくせ、そんな自分に満足できない。唯一、主人公の味方となる教師の母親は自分とカネにしか興味がなく、娘からは「奪い取って当然」としか考えられない。(というより、そんな思考を意識することすらできない。)母方の祖父にあたる存在は、社会的責任のある立場だから余計になのか、自分のやり場の無い悲しみに振り回されて、娘に全てのカルマを押し付けて虐待する。
奪っている者たちは幸せなのかというと、誰も幸せではない。まさに、抵抗できない女性や子どもを殴ることしか【能がない】わけで、自分でもそれを自覚しているので、いつもイライラ、モヤモヤしている。
唯一金持ちの加害者である母方の祖父も、地位も名誉もありながら幸せそうではない。そりゃ、自分の悲しみに自分で向き合わず、人のせいにし続けているのだから、悲しみから抜け出せようはずがない。
そして、自分より弱いものに不幸を撒き散らし、押し付け続ける。
それらの場面の端に、いちいち「無力なことば」が映り込みされている。いじめの場面では「暴言はやめましょう」と教室に貼られており、そのいじめに加担する教師がわざわざ国語教師なのもそうだろう。黒板に書かれている文学作品が、場面の中で空っぽの虚事になる。主人公が、諸悪の根源である義理の父親を殺すと心に決めている場面では「とめよう非行」といった標語の看板がある。どれも、そらぞらしい標語など何の役にも立たず、人間の悪意と暴力の前では言葉など無力だと示す演出だ。
だから、主人公は最後に、手紙の束に火を点ける。言葉を信じることをやめ、未来を信じることをやめようとする。だが、母親はそれを止め、「ことばには人の心を慰める力がある」、「あなたには未来がある」と語る。また、手紙の真実が明かされ、主人公の父親から託された「娘の生命をつなぐ装置」が、手紙の言葉であることが明かされる。
この流れの伏線があるから、最後の「叫ぼう」という結論が引き出される。おそらく主人公にとって「ドリームランドに行く」とは死ぬことだったんだろう。でも立ち止まった。母親と父親から、命が繋がれた瞬間だったのだと思う。そしてもちろんそこには、そのバトンの【実行者】となった「先生」の存在がある。そして「先生」に集約する。「どこかにいるはずの信じられる大人」の第一号として。
あの手紙がなければおそらくもっと早く、もっと不幸なカタチで主人公は壊れていただろう。経験を「物語」として消化できないからだ。看板の標語が無意味で無力でも、ただ口から出されるだけのうわべのことばに力はなくても、大切な言葉というのは遅効性なのだ。その時は効かなくても、あとから本当の効果をあらわす。毒にも、薬にも。
未来とは、まだこの世界のどこにもない時間のことだ。それも、一人ひとりの心の中にしかない。想像することでしか未来は存在しないからだ。まだこの世に無いものを、それでも信じる。希望も同様だ。信じるとは、無邪気な代物を指す言葉ではない。裏切られて裏切られて、この世に裏切りしかないと理解した果てにしか、信じるということはない。まさに、無いものを信じるからこそ「未来がある」のだと思う。
文句があるとしたら時系列がわかりにくい。どれが誰のエピソードなのが混乱し、理解が追いつかなくなる。よってこれ以上の点はつけにくい。
そこそこ
オチが微妙でした。
生徒の言った通り先生ちょっとこの家族に関わりすぎじゃないですか?
文乃が命をかけてまで娘を庇ったのに結局自首してしまうのかーと。まぁでも、一生抱え込むよりはいいんでしょうね。
叫ぼう!と言ったあとカメラ目線でうわああと叫ぶのですが、これは私たちに助けてと訴えているんですかね?
この映画かなり胸糞シーンが多いです。使用済みナプキンを広げて教卓に置いたり、文乃の再婚相手が娘をボコボコ(かなり)にしたり脱がそうとしたり等……これらが苦手な人は正直見ない方がいいです。何回か目を背けました。
あとびっくりしたのは頼りになる大人がほとんどいないこと。いい人だと思ってた人が最低なことしたりしてました。
終始人形のようだった北川景子さんが、娘を送り出すときパッと明るくなったのが凄く良かったです。
オチ以外は結構楽しめました。
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