しびれ

劇場公開日:2026年9月25日

解説・あらすじ

「佐々木、イン、マイマイン」「若き見知らぬ者たち」の内山拓也監督が、北村匠海を主演に迎えて撮りあげた自伝的作品。内山監督の故郷である新潟県を舞台に、自身の居場所とアイデンティティを模索する孤独な少年が、息をのむような大きな愛を知るまでの20年間を描く。

日本海沿いの町に暮らす少年・大地は、幼少期に暴君のようだった父の影響で言葉を発することができない。現在は母の亜樹と雑居ビル屋上のプレハブに暮らしているが、水商売で生計を立てる母はほとんど家に帰らず、生活も苦しい。やがて大地は亜樹とともに叔母の家に身を寄せるが、彼の居場所はどこにもなく、ひとりで過ごすうちに内気になっていく。そんなある日、父の行方を求めて生家を訪ねたことをきっかけに、大地の運命は大きく揺らぎはじめる。

主人公・大地の青年期を北村匠海が演じ、自分のもとを離れた父への静かな怒りと、母に対する憎しみと愛という相反する感情に揺れる心の内を体現。大地の母・亜樹を宮沢りえ、父・大原を永瀬正敏、大地の少年期を榎本司、加藤庵次、穐本陽月の3人が演じた。2025年・第26回東京フィルメックスのコンペティション部門で審査員特別賞を受賞。また、第76回ベルリン国際映画祭パノラマ部門にも正式出品された。

2025年製作/118分/PG12/日本
配給:NAKACHIKA
劇場公開日:2026年9月25日

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映画レビュー

4.0 前に進むこと、生きるということ。

2026年10月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

コロナ禍で映画館の来場者が激減したときに観た映画には特別なぬくもりを感じた。2020年に観た映画に関するメモを紐解いてみると、「2020年、僕の心を震わせてくれた映画のテーマは『切実』だった」とある。外出が憚られていた時期、会社に行ってもやることがなかった。だからひたすら映画館に通っていた。

『佐々木、イン、マイマイン』を観たのは2021年の元旦だ。今となっては渋谷の映画館の風景は覚えていない。でも佐々木がいなくなった空白のことはしっかりと心に刻まれている。何をやっても許される少年期の記憶は、いつまでもキラキラと輝いている。もう、あの時には戻れない。時が過ぎて風景が移ろい自分も変わった。その間に失われたことがある。あのバカばっかりやっていた佐々木はもういない。だけど、僕自身は今も生きている。

前置きが長くなったが、第26回TOKYO FILMeXで初披露された内山拓也監督の『しびれ』を観た。20年以上もこの脚本に取り組んできたという監督の分身、大地を4人の俳優たちが演じている。一貫しているのは「期待することを諦めかけた」切実なまなざしを16ミリフィルムで撮影していることだ。

酒を飲んでは母を虐げ続けた父に、お前の目が大嫌いだと睨みつけられて「もうやめて」と叫んだ後、言葉を発することができなくなった幼少期。
家族三人暮らしの生家から、家を空けてばかりの母と過ごした屋上のバラック暮らしへ。少年期には、新興宗教に嵌まった叔母と一線を引かれた居候生活、母は暴力的な男につきまとわれいた。
母と離れ、ホテルで独り暮らす青年期。成長した大地は、心の鎧のようなタトゥーを纏っている。北村匠海の役柄への没入が凄まじく、怯えた目で威嚇する、大地の持て余された日常を言葉なしで体現している。

食べることも、水を飲むことも、友だちを作ることも、母に甘えることも簡単ではなかった。口がきけないから、何がしたいのかを伝えられない大地が、切実に何かを求め続けた“生”の軌跡、それが『しびれ』だ。

この映画を観て、間断なく車が行き交う高速道路を横切り、泥まみれで鱒を捕まえ、眠る前には呪文を唱えたダルデンヌ兄弟の『ロゼッタ』、何かに駆り立てられるかのように階段を駆け上がる様を鮮烈に撮った『ある子供』が心をよぎった。

次の瞬間、何が起こるのか自分にも分からない。先は見えないけれど前に進む。言葉にはできない衝動が湧き上がり身体を突き動かす。初めての行動が自分を拓く。さっきまでと同じはずだけれど、何かが決定的に違っている。自覚するのは後だ。今は前に進まねばならないのだから。

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髙橋直樹

5.0 重いけど、見応え抜群

2026年10月11日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

フィルム感のある映像を通して、主人公の心象がヒシヒシと伝わってきた。
観終わった後も、いろんな場面が思い出されて、涙が溢れました。

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ソラ

4.0 観る人を選ぶ作品。

2026年10月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

新潟の冬を舞台に、家族と「家」を描いた静かな作品。

幼い頃のトラウマから声を失った主人公・大地。劇伴をほとんど使わず、海や風、車の音など、その場にある音を生かした演出が印象的でした。

16mmフィルムによるザラついた映像も、冷たく灰色の新潟の風景とよく合っています。

特に印象に残ったのが、大地を演じる4人の俳優。年齢が変わっても、どこか感情を閉ざしたような「目」が共通していて、セリフの少ない作品だからこそ、その目の演技が心に残りました。

派手さはありませんが、「家族とは何か」「家とは何なのか」を静かに問いかけてくる映画。

観る人を選ぶ作品だと思いますが、映像と音で人物の心情を描く演出は見応えがありました。

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leo

4.0 観客に届いてこその映像技術

2026年10月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

残念ながらこの映画は私に刺さらなかった。

手持ちでクローズアップの画面が非常に多く、
主人公に近い目線、位置から、
辛く苦しい感情を生のまま調理せずに提供している感じで、
意外と(フィクションとしては)珍しくない設定に加えて、
演出の過剰さが目立ち、ドキュメンタリー的に受け止めるのも難しく、
かつ各シーンも長く、緊張感がまったく続かない。

全体に濃淡があればこそ、濃さが際立つのではないか。

主観的な映画もあっていいと思うし、
必ずしも分かりやすく説明する必要はないと思うが、
観客と交流しようと、もう少し近づいてきてほしい。
観客を信頼、期待しすぎの一方的な愛。

ただ、そのような感想の可能性は百も承知で作っているのだろうし、
あえての挑戦には敬服します。

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HK