箱の中の羊

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劇場公開日:2026年5月29日

解説・あらすじ

「怪物」「万引き家族」の是枝裕和監督が、綾瀬はるかとお笑いコンビ「千鳥」の大悟を主演に迎え、亡き息子の姿をしたヒューマノイドを迎え入れた夫婦の物語をオリジナル脚本で描いた長編映画。

少し先の未来。建築家の甲本音々とその夫で工務店の2代目社長を務める健介は、2年前に亡くした息子・翔の姿をしたヒューマノイドを迎え入れることになる。ヒューマノイドが到着した日、翔と同じ笑顔と声をした彼を音々が喜んで迎える一方で、健介は戸惑いを隠しきれず硬い表情を浮かべる。家族の時間は少しずつ動き出すが、やがて予期せぬ事態が起こり、夫婦が息子の死に対してそれぞれ抱えていた想いがあらわになっていく。そんな中、ヒューマノイドの翔はひそかにヒューマノイドの仲間たちとつながりはじめる。

夫婦の亡き息子・翔とその姿をしたヒューマノイド役には、オーディションで200人以上の中から選ばれた桒木里夢を抜てき。音々の妹・小滝亜利寿役で清野菜名、健介が経営する工務店タマケンの従業員・日高玄役で寛一郎、音々の母・西村信代役で余貴美子、タマケンの熟練工・山縣昭男役で田中泯が共演。タイトルの「箱の中の羊」は、サン=テグジュペリの名作小説「星の王子さま」の1節に由来する。2026年・第79回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。

2026年製作/125分/G/日本
配給:東宝、ギャガ
劇場公開日:2026年5月29日

オフィシャルサイト

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受賞歴

第79回 カンヌ国際映画祭(2026年)

出品

コンペティション部門
出品作品 是枝裕和
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©2026フジテレビジョン・ギャガ・東宝・AOI Pro.

映画レビュー

3.0 なるほど確かに、ラストは“想像を超えた未来”ではあった。

2026年6月2日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

難しい

驚く

楽しみにしていた映画。人気の是枝監督の作品。
大好きな綾瀬はるかちゃんに、なんと千鳥の大悟さん出演というサプライズ!!
これはもう、鑑賞するしかない。

前半、うんうん、監督が大悟さんを選んだ理由がなんとなく理解できる。
綾瀬はるかちゃんとの夫婦役も、違和感なく自然でいい感じ。

長澤まさみちゃん主演の「ドールハウス」とは少し違うけれども、ヒューマノイド(AI)で喪失を埋める系の映画なのかな〜と、単純に予想して観ていた。

終始、翔に懐疑的な立場をとっている健介(大悟)と翔に希望を見出しつつも、
母親との確執から愛しきれずにいる音々(綾瀬はるか)の対比が面白いし見ごたえはあった。

ただ、中盤から後半にかけての展開は、少し唐突というか……正直、私には難しかった。

この映画を観て、
私の胸の中に何が残ったか?

ええっ?ええっ⁈ええっ???😳
そういう終わりなのーーー😱

まって~(素直な心の叫び)

なるほど確かに、
ラストは“想像を超えた未来”ではあった。

でも監督、すみません……。
私には、少し高尚すぎました。

まずは『星の王子さま』から読み直します🫡

追伸 ~見どころを添えて~
・「たまごっちかよ」「ルンバかよ」の大悟さんのセリフの切れ味⚔️神
・綾瀬はるかちゃん夢のひざ枕でヘッドシャンプーをしてもらう大悟さん👼役得
・綾瀬はるかちゃんの透明感よ✨永遠に😘

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ななやお

3.5 人間は結局、自分の見たいもので物事を見てしまう生き物なのかもしれない。

2026年5月30日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

是枝監督がインタビューで、「中国で実際に存在する死者をAIで再現するサービス」を知ったことが、『箱の中の羊』の発想の出発点だったと語っていた。

生きている人間が、死者の存在を自分たちの都合で操作していいのか。

喪失を受け入れるとは何か。

その問いに対する監督なりの答えは、この作品に詰め込まれていると感じられた。

ヒューマノイドとして死者が蘇ったとしても、結局そこに投影して見ているのは、自分の中のその人であって、その人自身ではない。
少なくとも私には、それは現実を受け止めるのではなく、どこかその人の死から目を背けているようにも感じられた。

ただどうも直近で同じように、子供を失った両親の喪失を描いた『ハムネット』を観てしまったがために、比べてしまう。

個人的には『ハムネット』の方が、喪失の受け止め方から、再生への流れの説得力や、納得感が素晴らしいと感じた。
こちらはどうも全体的に薄味で、物語の展開も唐突だったり、説得力が物足りなく感じた。

一方で、今回大悟の演技を観たくて見に行ったところもあったのだが、その点に関しては大満足だった。

芸人さんが演技をすると、どうもバラエティで見せる姿が頭にちらついて集中できないことがある。

しかし本作では、是枝監督があえて大悟らしさを消さず、あの方言や話し方をそのまま作品に落とし込んでいた。
その自然さがむしろ役柄に説得力を与え、最後までノイズを感じることはなく観ることができた。

『箱の中の羊』はAIやヒューマノイドを描いた作品ではあるけれど、本質的には「人は喪失とどう向き合うのか」を問い続ける物語だと思う。

そして、その問いに対する答えは一つではない。

まるで、箱の中の羊の姿が人それぞれ違って見えるように、この作品もまた、観る人によって受け取り方が変わる作品なのだろう。

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AZU

3.5 自我に目覚めれば目覚めるほど、息子からは遠ざかる

2026年5月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

息子を誘拐事件で失った夫婦が、息子そっくりのヒューマノイドを向かい入れることで起きるざわめきを掬い取ろうとした作品。そのざわめきが多方面に渡っているので、主題が何かをつかみにくいのだが、今後社会で起きうる題材に挑んだ是枝監督の意欲はよくわかる。
息子と同じ概観で反応も息子そのものAIに、息子同様の愛情を感じることはできるのか、という問いに半ばイエスで半ばノーという回答を示しつつ、ロボットの反乱というわけではないがGPSを自発的に外して、人間のいないところで暮らそうという自我に目覚めていく展開が深まるにつれ、夫婦はその自立を見送るという決断をくだす。子どもの親離れとは少し違う、AIが自我に目覚めれば目覚めるほどに、やっぱりこの子は息子とは違うという感覚になっていったのはわかる。
気になるのは、綾瀬はるか演じる妻の妹は養子を迎え入れたということ。このくだりとヒューマノイドを息子として迎え入れた夫婦を対比させて、どう受け止めればいいのか戸惑った。
実は猫の存在も気になった。近年、子どもを持たずにペットに愛情を注ぐ人は多くなっているが、愛玩動物もまた子どもの代替品であるというような部分もある。それと対比させるような描写は特にないのだが、どうして猫をある程度フィーチャーするような脚本にしたのかは気になる。
愛情とはそもそもなんだろうか。愛情に根拠も条件もなく、血がつながっていなくてもいいし、人間同士じゃなくてもいいとすればロボットが対象でもいいだろう。しかし、結局はヒューマノイドの両親には主人公たちはなれなかった。死んだ息子の代わりではなく、一人の自立した対象として愛情を注ぐ対象として見られる日はこないのだろうか。

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杉本穂高

4.0 “時代遅れ”か、“時を超える真理”か

2026年5月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

知的

是枝裕和監督(兼脚本)は「死者をAIとして蘇らせるビジネスが中国で人気という記事を目にしたこと」が本作を着想する大きなきっかけになったとし、また「もともと『フランケンシュタイン』が好きだった」とも語っている。死者をAIで蘇らせる話としては、平野啓一郎原作・石井裕也監督「本心」(2024)が記憶に新しく、あちらはVRゴーグル越しに見る仮想空間に故人を生成するという設定が2020年代の現状により近い印象を受けた。

一方で1818年に発表された「フランケンシュタイン」に端を発する主題は、人間そっくりの人工物を作れるほど科学技術が進歩したとき、それに魂を吹き込むことはできるのか、人と同じ心や自由意志まで宿すことはあるのかという問い。また、そうした思考実験を経て、そもそも人の心とは何か、人間を人間として定義する要件は何かという哲学的な思索を促す難題でもある。こうしたテーマはSF映画でもたびたび登場し、主だったところではリドリー・スコット監督「ブレード・ランナー」、スティーブン・スピルバーグ監督「A.I.」、コゴナダ監督「アフター・ヤン」などが挙げられる。

映画「箱の中の羊」ではほかに、サン=テグジュペリが1943年に発表した小説「星の王子さま」への言及がある。語り手が王子に箱の絵を描き、君の欲しい羊はこの箱の中にいると告げたら王子が喜んだというエピソードで、映画のタイトルもこれから取られている。映画の文脈においても複数の解釈が可能だが、喜びや幸せはその人の心のあり方次第、と考えるなら先述の人の心とは何かという問いとも関わってくる。

これらの問いが時代を超えてさまざまな作品で手を変え品を変え語られてきたのは、決して正解の出ない永遠の問いだからでもある。劇中の建築設計についてのエピソードで、デザインの試行錯誤を重ねる、その過程こそが大事という話もあった。ただこの手の話は、コスパ、タイパ、生産性が重視されるこのご時世、とくに若い世代には“時代遅れ”と受け止められるのかもしれない。

いやいや、そういう答えが簡単に出ない問題をじっくり考えること、向き合うことも人生には大切、それが普遍の真理なんだからと肯定的に思えるなら、映画の内容も腑に落ちるだろうか。

是枝監督作としては前作の「怪物」がすごく良かったので、期待値を上げすぎたかもしれない。原作漫画・アニメーション映画ともに最高だった「ルックバック」の実写映画化も今年公開予定だそうで、こちらも大いに期待。

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高森郁哉