急に具合が悪くなる

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劇場公開日:2026年6月19日

解説・あらすじ

「ドライブ・マイ・カー」「悪は存在しない」の濱口竜介監督が、パリを舞台に同じ名前の響きを持つ女性2人の魂の邂逅を描いたドラマ。がんの転移を経験しながら生き抜く哲学者・宮野真生子と、臨床現場の調査を積み重ねた人類学者・磯野真穂が交わした20通の往復書簡「急に具合が悪くなる」を原作に、偶然出会った2人の女性の交流と世界に対峙する姿を描き出す。

パリ郊外の介護施設「自由の庭」で施設長を務めるマリー=ルー・フォンテーヌは、入居者を人間らしくケアすることを理想としながらも、人手不足やスタッフの無理解に悩まされていた。そんな中、日本人の舞台演出家・森崎真理と出会ったマリー=ルーは、がん闘病中の彼女が描く演劇に勇気をもらう。同じ名前の響きを持つ偶然に導かれて交流を始める真理とマリー=ルーだったが、あるとき真理は急に具合が悪くなる。真理の病の進行とともに2人の関係は深まり、互いの魂を通わせ合うようになっていく。

「ベネデッタ」のビルジニー・エフィラがマリー=ルー、「ウルヴァリン:SAMURAI」などハリウッド映画にも出演する世界的ファッションモデルのTAOこと岡本多緒が真理を演じ、真理が演出する舞台の出演俳優・清宮吾朗役で「敵」の名優・長塚京三、吾朗の孫・窪寺智樹役で「見はらし世代」の注目若手俳優・黒崎煌代が共演。2026年・第79回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、ビルジニー・エフィラと岡本多緒がそろって女優賞を受賞。岡本は日本人で初のカンヌ国際映画祭女優賞受賞を果たした。

2026年製作/196分/G/フランス・日本・ドイツ・ベルギー合作
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:2026年6月19日

オフィシャルサイト

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第79回 カンヌ国際映画祭(2026年)

受賞

コンペティション部門
女優賞 ビルジニー・エフィラ 岡本多緒

出品

コンペティション部門
出品作品 濱口竜介
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映画レビュー

4.5 資本主義への内部からの抵抗―ユマニチュード、演劇、そして映画

2026年8月1日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

難しい

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共感した! 9件)
マユキ

4.5 心地よい風を感じる、3時間16分

2026年7月23日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

 心地よい風が、全編通じて吹き抜けている。それが直後の印象で、帰り道、自然に顔がほころんだ。それから数日。思い返すほどに、なかなか不思議な映画だったなという思いも湧いている。フランス語、日本語、時折り英語、そして話し言葉に書き言葉、さらには演技を含めた身体表現。様々なツールを行き来しながら、伝え合うこと、分かり合おうとすることの面白みや味わい深さを、存分に描き出す。つくづく、至福の3時間16分だった。
 介護施設を運営し、理想と現実のはさまで悩むマリー=ルー。心身疲れ果てたさなか、風のように駆ける智樹を偶然目撃し、たちまち心奪われる。(智樹は、まさに風そのもの。本作品を体現する、忘れ難い存在だ。)智樹に声を掛けたことが智樹の祖父と活動している演出家・真里と出会いへと繋がり、同じ名を持つ2人は、静かに強く惹かれていく。しかし、末期がんである真里に残された時間はわずか。ひたひたと忍び寄る別れのときを予感しながら、2人は飽きることなく言葉を重ね、相手と自身を見つめていく。
 きちんと伝えたいからと母国語で言葉を紡ぎ、想いは伝わっただろうかと慮り、時と場を共有しながら距離を縮める。ありふれた世間話抜きで展開していくふたりの会話は、穏やかながらどこかスリリングだ。あれよあれよと引き込まれ、ふたりと同じく、時の流れを忘れそうになった。言葉を介して分かり合えるか否かより、こぼれ落ちるものをすくい取り、伝え、わずかでも分かろうとすること。そこに、人と関わることの面白さや本質がある、と改めて思った。
 緻密なやり取りの中、それぞれが行き詰まりや緊張を感じるとき、ふっとつむじ風のようにやってきて、その場をかき乱す智樹。風は、吹き抜けるその瞬間だけでなく、去っていったあとの思い返しや、近付いてくる予感の中でも、軽やかで心地よい。後半は、智樹の黄色い服が視界の隅に入るだけで、心が浮き立ち、わくわくした。彼は、本作品の隠れた主役といってもいい。
 また、存分に言葉を重ねたその先が、「布団とベッド」という身体のかたまりに至るところも心に残った。身体を他に委ね、風を感じる心地よさ。そして、鳥のふんをめぐる微笑ましいやりとりも忘れ難い。否応ないトラブルを笑い合い、ぬぐい合える人がいるのは、つくづく幸せなことだ。

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共感した! 8件)
cma

5.0 観終わった後、世界が少しだけ優しくなる映画です。

2026年7月1日
iPhoneアプリから投稿

知的

難しい

斬新

満を持して、濱口竜介監督の『急に具合が悪くなる』を鑑賞しました。

上映時間を見た時は、正直少し慄きました。
196分。
『ドライブ・マイ・カー』や『国宝』の約3時間をさらに超えてくる、まさかの3時間16分😳

楽しみにしていたはずなのに、どこかで少し先延ばしにしていたのは、この長さに少し怯んでいたからかもしれません。

けれど、ここで上映時間に怯んでなどいられません。
何故なら濱口監督には、きっと緻密な計算と勝算があると思うからです。
作品の長さは、単なる長さではない。
むしろ、その映画が完璧なかたちで完成するために必要不可欠な時間なのだと思ったからです。

映画を観終わった後、その考えは確信に変わりました。
さらに驚いたのは、その大胆な時間の使い方です。

作品の核となる劇中劇。
長塚京三さんによるひとり芝居は、ほぼ30分という尺で、一度ならず二度までも登場します。
この映画の中で、非常に大きな時間を占めている場面です。

一体どれほどの勇気があれば、あの静寂や不協和音の長い時間を、これほど大胆に差し出すことができるのだろう。
そしてそのあまりに混沌とした空間を、これほどまでに緻密に破綻なく整えることができるのだろう。

静寂の時間さえ、秒単位で計算されているかのような緻密さを感じました。
静かだけれど、無駄な時間は1秒もない。
まるでその居心地の悪ささえも、演出なのだと言わんばかりに。

そこに唸らずにはいられません。

濱口監督は、
怯むどころか、挑んでいる。
静寂にも、不協和音にも、絶望の時にも、決して諦めていない。
すべてをあるがままに、静かに丸ごと受け止めて、人と人の対話に置き換え、優しい時間へと変えてしまう。

観終わった後、心の中でひとり拍手喝采しました。
もちろん、座りながらスタンディングオーベーションです👏

今年初の星5作品かもしれません。
とにかく私には、ど真ん中に刺さった作品🎬 「ドライブ・マイ・カー」も良かったですが、さらにこちらの方が好きかも🤫

こんな作品にまだ出会えることがあるから、やはり映画鑑賞はやめられません。
下手をしたら、短い映画2本分以上の満足感(満腹感)
そして、半端ではない余韻✨
コスパ最強!!
観ないのはもったいない。

哲学が好きな人。
人生について、少し深く考えたい人。
人と人が向き合う時間を、じっと見つめたい人。
そんな人には、ぜひ観てほしい作品です。

最後に、この作品と向き合うには、観る側にも少しだけ緻密な計算と準備が必要です。

ご飯どきなら、軽くお腹に入れておく。
お手洗いは必ず済ませておく。
前日はしっかり睡眠をとっておく。

この準備をしておくことで、きっと作品への没入感は何倍にも上がります。

今年いち推しの映画です🎬

観終わったあなたの世界は、少しだけ優しく見えるかもしれません。
ぜひ、映画館でご鑑賞ください。

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共感した! 16件)
ななやお

5.0 二人の掛け替えのない出会いと併走を5年後、10年後も忘れないだろう

2026年6月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

本作のことは10年後も忘れないだろう。序盤に描かれる様々な仕事上の障壁や困難は、全てこの「瞬間」に向けての布石だった。強くそう確信できるほど彼女たちの出会いは運命的で、奇跡的。重苦しい午後、颯爽と鳥が放たれるかのように色づく車窓の風景は今なお鮮烈に思い出せる。そこに続く青年との時間といい、長塚京三の息を呑むほど柔和な舞台表現といい、さらには仏語と日本語が心地よく入り混じり、互いの思考を緩やかに解き放つように世界の諸問題を見つめるダイアローグといい、このたった1日の出来事が価値観や生き方を180度変えていく様はまさに希望だ。理不尽で不寛容で分断された世界に暮らす誰しもにとって、これは掛け替えのない光となろう。介護施設という場所。その建物が持つ歴史。流れる時間。集う人々。全てに意味があって、個と個は共に命尽き果てるまで結束しあって不可能を超えていける。196分、あらゆる瞬間を抱きしめたくなる。

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牛津厚信