「中尾監督にしか成し得ない独創的な愛すべき作品」道行き 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
中尾監督にしか成し得ない独創的な愛すべき作品
かつてPFFグランプリを受賞した『おばけ』が忘れられない。世の中に数多くの物語や映画が存在する中、あの作品は中尾監督にしか成し得ない唯一無二の独創性を持った作品だった。次回作も必ず観たい。観なければ。その思いは6年の月日を経てようやく『道行き』として叶うことに。列車、時計、街、歴史、そして人。本作にはストーリーの枠組みを超越して、モチーフとなる領域、概念、心象世界をゆったりと逍遥(気ままにぶらぶら歩く)するかのような趣きがある。不意に記憶が遡る。懐かしいあの人の匂いや表情が心に蘇る。列車は進む。ともに座席に腰を下ろしていた人たちもいつしか手を振りながら各駅で降りて去っていく。それが人生なのだと言わんばかりに。おそらくどんな街にも、人にも、同じような歴史や足並みのリズムが刻まれているのだろう。ドキュメンタリーとも見まごうようなナチュラルなタッチで紡がれる80分。日常の見方を変えてくれる一作。
コメントする
