コラム:上質映画館 諸国漫遊記 - 第12回

2026年6月23日更新

上質映画館 諸国漫遊記

映画を愛する人にとって、テレビやネット動画もいいけれど、やはり映画は映画館で観るものだと考える方は多いだろう。本コラムでは全国の映画館の中から「これは」と思う上質なスクリーンを訪問し、その魅力をお伝えしたい。(取材・撮影・文/ツジキヨシ)


近畿のドルビーシネマ3館を一挙紹介 ③T・ジョイ梅田/地下街を抜けると、そこは映画の楽園だった

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▼映画をできるだけいい環境で楽しみたいシネフィルに最適なシアター

今回ご紹介するのは、大阪府 大阪市にあるT・ジョイ梅田のシアター1。前回、前々回に続いて、近畿地方のドルビーシネマ3スクリーン紹介の第3弾をお届けする。

前々回(第10回)の連載冒頭で記した通り、近畿地方のドルビーシネマ3つを同じ映画で鑑賞、比較しながら一筆で回ったせいもあり、同じ「ドルビーシネマ」という上映フォーマットのパフォーマンスの高さと厳しい基準をクリアーしつつ、それぞれスクリーンが備える個性が明確に感じられた取材旅行になった。

その3スクリーン目である、T・ジョイ梅田というシネマコンプレックスについて、まず簡単に紹介しよう。

T・ジョイ梅田は、大阪の中心街にある「E-ma(イーマ)」という商業ビルの7階から13階にある、全7スクリーン1,390席(+車椅子16)構成のシネマコンプレックス。元々、「ブルク梅田7」として2002年4月に、地上14階地下3階のE-MAビル開業と同時期にオープンしたが、2023年4月に、「T・ジョイ梅田」に改称し、現在に至る。

運営は、東映株式会社のグループ企業である東映ジョイ・エンタテインメント株式会社。2019年6月に関西地区としてはじめてのドルビーシネマとしてオープンした。ちなみに日本では、2018年11月のT・ジョイ博多、2019年4月のMOVIXさいたまに続く、3館目のドルビーシネマとなる。

T・ジョイ梅田を運営する東映ジョイ・エンタテインメント株式会社(2026年4月に株式会社ティ・ジョイから社名変更)は、シネマコンプレックスのクォリティ面での取り組みに意欲的であることで知られている。具体的には、2010年の創業10周年には、「当時運営していた全15劇場、全144スクリーンのデジタルシネマシステム導入実現」や「映画「トイ・ストーリー3」公開にあわせてドルビーサラウンド7.1ch音響上映を全15劇場で実施」などを行う。

2016年には「T・ジョイPRINCE品川と横浜ブルク13でIMAXデジタルシアターを導入」、そして、2018年には「T・ジョイ博多に日本初のドルビーシネマをオープン」した。いずれも上映品位を高める施策であり、タイミング的にも、他のシネマコンプレックスチェーンよりも早く、映画をできるだけいい環境で楽しみたいシネフィルにとって、特筆できる試みだ。

T・ジョイ梅田は、JR「大阪駅」、同「北新地駅」、阪急/阪神「大阪梅田駅」、御堂筋線「梅田駅駅」、谷町線「東梅田駅」、四つ橋線「西梅田駅」からアクセスでき、非常に利便性に優れた立地といえよう。

今回は新幹線で京都から移動し、新大阪駅経由で大阪駅の地下街経由で当地に向かったが、四方八方に広がる複雑な地下街に惑わされ、恥ずかしながら、ちょっと迷子になってしまった。スマホの地図アプリを使ったものの、地下ということもあって電波状態が悪く、現在地の表示も曖昧になったこともあり、ロールプレイングゲームのダンジョンを攻略している気分となった。かなり時間に余裕を持って現地に向かったが、それでも少し焦ったほど。案内図にある「イーマ」に注目しつつ、大阪駅からは阪神百貨店を超えて、大阪市サービスカウンターを抜けた通路に、地下からの入口が見えたときは、うれしい気持ちにすらなった……。

ちなみに「E-ma(イーマ)」とは、「いい空間」という言葉の、頭と語尾から、名付けられたそう。現在、「E-ma」には、T・ジョイ梅田のほかに、カフェやアパレル、インテリアショップ、クリニックなど多彩なテナントが入居している。

「阪神百貨店」「ホワイティ梅田」方面に向かい、8-17出口に目指す
「阪神百貨店」「ホワイティ梅田」方面に向かい、8-17出口に目指す

▼「ドルビービジョン」「ドルビーアトモス」「究極のシアターデザイン」がドルビーシネマの3要素

ドルビーシネマについて簡単におさらいすると、以下の3要素を備えたデジタルシネマ上映フォーマットである。

①4Kレーザープロジェクターを2台使ったHDR対応「ドルビービジョン方式」の高画質
②天井スピーカーを含む3次元立体音響「ドルビーアトモス方式」の高音質
③快適な座席、室内環境などがドルビー基準に沿った「究極のシアターデザイン」

本連載で幾度か紹介した通り、上記の画質/音質/再生環境の3要素を兼ね備えた、「ドルビーが考える<最強の映画館>」が「ドルビーシネマ」である。詳しくは本連載の第1回、あるいは第10回、第11回をご覧いただきたいが、今回は、ドルビーという会社自体のことと、映像上映方式「ドルビービジョン」について、少し詳しく紹介しよう。

ドルビーとは、正確には、業務用音声ノイズリダクション「ドルビーNR」を開発したことで知られている、「ドルビーラボラトリーズ」のことで、1965年イギリス・ロンドンで創業。現在の本社はアメリカ・サンフランシスコにある技術志向の会社である。

同社は、家庭用カセットテープのノイズ低減技術「ドルビーB」をリリースしたのち、映画音響システム分野にも進出。1971年にはスタンリー・キューブリック監督「時計じかけのオレンジ」でドルビーNRが採用され、さらに1976年には映画向け4chアナログサラウンド技術「ドルビーステレオ」(初採用は『スター誕生』)によって、映画世界の本格サラウンド再生をもたらした。

1992年には5.1chデジタルサラウンド技術「ドルビーデジタル」(初採用は「バッドマン リターンズ」)でデジタル技術を用いた、デジタルサラウンド時代の幕を開いた。1999年には6.1chデジタルサラウンド技術「ドルビーデジタルサラウンドEX」(初採用は「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」)をリリース。いずれも現在も使われている重要かつ基本的な映画音響技術の代表例である。

2012年には天井スピーカーを使って半球状のサラウンド音響を実現する「ドルビーアトモス」(初採用は「メリダとおそろしの森」)を生み出した。このようにドルビーは、映画音響の事実上の標準規格を長年に渡って提供し続けている存在だ。

8-17地下街出口。「イーマ」が目印だ
8-17地下街出口。「イーマ」が目印だ

▼音響技術会社ドルビーが生み出した画期的映像技術が「ドルビービジョン」

そんな立体音響技術で知られたドルビーラボラトリーズが手掛けた映像技術が「ドルビービジョン」である。

ドルビーが映像分野に進出したのは、2007年に、ブライトサイド(Brightside)という技術会社を買収したのが直接的な契機となったようだ。同社は、液晶ディスプレイの画面の明るさをつかさどるLEDバックライトを分割発光させることで、映像の明暗差(コントラスト)を飛躍的に高めるという技術を保持していたが、それを元にした高画質映像技術を元に、ドルビーがそれをさらに強力に発展させ、「HDR(ハイ・ダイナミックレンジ)」という映像表示手法を開発、確立した。

HDRは、人間の目が光をどう感じるか、という視覚特性の基礎研究を行い、暗い部分の変化は敏感ではあるが、明るい部分の変化には鈍感であることを突き止め、実際の視覚に極めて近い映像表現を目指した最先端の技術だ。映画世界のみならず、パソコン、スマホ、タブレットなど、非常に多くの映像デバイスで使われている。そんなHDR技術の基本原理をドルビーが作り出し、多くの機器で使われるレベルに規格化までこぎつけたのである。実際には2014年に「HDR10」(技術名称はSMPTE ST 2084)として国際標準規格として採用され、オープンな規格(つまりライセンス料不要な技術)として公開したのである。

繰り返すが、現在のテレビやパソコンモニター、スマホ、タブレットで使われている全HDR表示技術は、すべてドルビーが開発した「HDR10」を元にしており、その意味でも彼らが果たした役割は極めて大きい。筆者は、ドルビーアトモス音響についての取材をテーマに、2010年ごろにサンフランシスコにあるドルビー本社を取材したことがあるが、「映像分野の研究を強力に推し進めている」との説明を聞いて、当時は不思議な気分に囚われた記憶があるが、そこでは、HDRの研究をしていたのだろう。いまとなっては、その先進性には感服するしかない。

このHDRは、映画上映技術においては「ドルビービジョン」という名称で規格化され、映像制作システムから、伝送/配給システム、そして上映システムとして提供している。ちなみに、ドルビービジョンとHDR10は、基礎技術や考え方は近いが、HDR10に比べてドルビービジョンはより発展的な技術が盛り込まれており、ライセンス料も不要ではない。

現在、一般的な映画館のスクリーンの明るさは48nit(nitは明るさの単位)が1つの基準であるが、ドルビービジョン(=ドルビーシ ネマ)は、2台の4K解像度のレーザー光源プロジェクターを使うシステムにより、108nitという2倍以上の明るさを実現。コントラストレンジ(明暗比)は、一般的なスクリーンでは2,000:1程度だが、ドルビービジョンでは1,000,000:1(!)と500倍もハイスペックとなっている。

日本ではドルビービジョン映像は、先に上げたように、ドルビーシネマの1要素として全国11スクリーンで提供されている。現在、ドルビーシネマは、「ドルビービジョン映像+ドルビーアトモス音響」の2大技術要素の採用が必須なので、逆にいえば、ドルビービジョン映像だけに対応する「非ドルビーシネマのドルビービジョン上映スクリーンは日本では存在しない」点には留意されたい(海外では存在するようだが)。

一方のドルビーアトモス音響は、必ずしもドルビーシネマスクリーンの専用の技術ではない点も注意が必要だ。つまり、ドルビービジョン映像を採用していないが、ドルビーアトモス音響を採用しているスクリーンも全国に点在している。筆者が数えたところ、日本では「ドルビーアトモス採用スクリーン」は全国で51、そのうち「ドルビーシネマが11」、「残り40が非ドルビーシネマのドルビーアトモス」採用スクリーンだった。

エレベーターで7階にあがると、すぐホワイエが現れる。ツートーンカラーのインテリアが上質さを感じさせる
エレベーターで7階にあがると、すぐホワイエが現れる。ツートーンカラーのインテリアが上質さを感じさせる

▼大阪駅地下街に直結のシネマコンプレックス、T・ジョイ梅田に作られたドルビーシネマ

JR大阪駅から直結している地下街の8−17出口からT・ジョイ梅田があるE-maビルに入る。わずかな傾斜がとけられたスロープの右側に「DOLBY CINEMA」ディスプレイと公開中作品のポスターが出迎えてくれる。正面のディスプレイも、E-maのテナント紹介とあわせて公開中あるいは公開予定の映画作品のトレーラーが流されている。

「おお、日本全国に11しか存在しないドルビーシネマに来たぞ」と気分が盛り上がる一方で、なんだか控えめな印象もあった。「ここはドルビーシネマ、凄いスクリーン、プレミアムな劇場なんですよ」と一般の方にも強くアピールしたらいいのに、とも思った。いろいろな事情はあるのかもしれないが、なんだかもったいないような気がした。

ビルに入り、エレベーターで7階に向かう。エレベーターの扉が開くと、明るめの茶色と暗めの茶色のインテリアでコーディネートされた広々としたホワイエが現れる。奥の明るめのエリアが飲食物やグッズ販売のいわゆるコンセッション(売店)エリア。エレベーター脇にはチケットカウンターと、KINEZOと名付けられたインターネットチケット販売システムでの発券機が並んでいる。

カーペット敷きのフロアーは清掃が行き届いていて、非常に清潔感が高く、インテリアの色合いもあり、上質な印象を受けた。入場前にトイレに行ったが、そこでもクレンリネスが徹底されていて、細部まで手抜かりがなく、運営スタッフの意識の高さがうかがえた。「うん、いいシネマコンプレックスの可能性が高いぞ」という気分で、ちょっとワクワクした。待合い場所のソファ数は14。

今回は、前回、前々回の本連載でも紹介した「私がビーバーになる時」の吹替版ドルビーシネマを鑑賞した。ネット予約でチケットを購入した場合は、QRコードを利用したチケットレス入場も可能だが、今回はチケットを発券した。

AVP(Audio Visual Pathway)と呼ばれる、スクリーンエントランスの横長ディスプレイ
AVP(Audio Visual Pathway)と呼ばれる、スクリーンエントランスの横長ディスプレイ

ドルビーシネマがあるスクリーン1は、ホワイエがある7階から、エスカレーターで1フロアー上がった8階にある。明るめの茶色のインテリアから、ドルビーシネマのテーマカラーのブラックとブルーに彩られたスペースがシアターのエントランスだ。「DOLBY CINEMA」のロゴと、横長ディスプレイを用いたAVP(Audio Visual Pathway)がお出迎えしてくれる。

シアター内は、16列の座席がかなりの傾斜を設けて配置された、スタジアムスタイルの座席レイアウトが採用されている。スクリーンの横幅に対してシアターの奥行きは比較的浅く、シアターを上からみると横長のフォルムのシアターである。天井高は目測で10mほどか。

スクリーン幕面に対して中央付近の座席はまっすぐ正対した状態で、左右の座席はやや角度をつけた向きで配置されており、どの席であっても画面が見にくくならないように工夫されている。

ドルビーシネマでは座席レイアウトについても、一定の基準が設けられていて、「ドルビーシネマ」に相応しい品質での上映体験が必ず得られることに徹底的にこだわっているのが特徴のひとつだが、T・ジョイ梅田での座席レイアウトで、そうしたこだわりを再認識した。座席数は376席+車椅子2、合計378席。

スクリーンサイズは公開されていないが、高さ8m程度、横幅は15m程度のビスタサイズのようだった。上下左右のほぼ壁面いっぱいに幕面を確保した「ウォール・トゥ・ウォール」スタイルとなり、かなり大きな印象。ドルビーシネマの常で緞帳は備わらない。スピーカーは、天井スピーカーも含めて、すべて隠蔽設置となり、艶消し黒とドルビーブルーのアクセントライトのインテリアが落ち着いた雰囲気を醸し出す。

今回はI-15という前から8列目、大きく2分割されているシートブロックの後方側の最前列の、ほぼ中央席で鑑賞した。この座席では、視線を正面にすると、自然にスクリーン幕面のほぼ中心あたりを観るような位置であり、しかも画面が近すぎもせず、遠すぎもせず、ほぼベストポジションに思えた。ややシアター前方であるものの、音響的にもほぼ理想的なスポットだと思われる。シートはT・ジョイ系列のドルビーシネマ(T・ジョイ博多、T・ジョイ横浜、新宿バルト9)で採用されている座席と同じ仕様のようだ。ドリンクホルダーは片袖タイプ。

なお、T・ジョイ梅田ホームページ内の施設案内から各シアターのバーチャルツアーが提供されていて、シアター内を詳細がオンライン上で体験できる。実際に劇場に足を運ぶ前に、仮想空間とはいえ、体験できるのは非常に嬉しい。すべての劇場、シアターで提供してほしいサービスとすら思う。ぜひお試しいただきたい。

左右壁面、天井を含めて、スピーカーは一切露出しておらず、艶消しブラックとドルビーブルーの落ち着いたインテリアで統一されている
左右壁面、天井を含めて、スピーカーは一切露出しておらず、艶消しブラックとドルビーブルーの落ち着いたインテリアで統一されている

▼色、解像度、コントラスト。すべてが抜群のドルビービジョン映像

予告編や広告映像に続いて、ドルビーシネマの仕様を紹介するおなじみのトレーラーが流れる。音響面ではサラウンド音響空間イメージの広さが印象的だ。物理的なシアター空間、つまり壁面から音が鳴っている感覚は一切なく、右の壁面はもちろん、天井面も含めて、リアルな壁面の制約を超えた、広大な空間で音が鳴り響く(ように感じた)。特に光る珠が空間を移動しながら、音が動き回る際、上方から後方空間に配置される音が、ピンポイントかつシャープに定位する様で、ドルビーアトモスの威力の凄さを再認識した次第だ。上方から雷鳴が響き渡る際のクリアーかつ深く沈み込んだ低音の迫力も際立っている。

さらに強烈な印象を受けたのが、色の再現力の素晴らしさだ。白く輝く光の珠から、カラーバー的な様々な色が円柱状に放射する場面での、鮮やかで力強い原色表現。そして子どもが歩く夕焼けの海辺のグラデーション描写。夕焼けのなか赤く輝くサンフランシスコのゴールデンブリッジの微妙な中間色の描き分け。

トレーラーには、「映画に命を宿し 心揺さぶる これがドルビーシネマ 完全に没入する 究極のシネマ体験が いま始まる」との説明コメントが所々挿入されるが、その惹句に大いに納得できた。

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映画「私がビーバーになる時」の本編のハイクォリティぶりも当然ながら凄まじかった。映画は主人公メイベル・タナカが、あることをきっかけに題名通り、ビーバーになるのだが、ビーバー視点での自然界の音がナチュラルでありながら、ここぞという場面では、外連味たっぷりに音の演出を伝えてくれる。立体空間を自由自在に使いこなし、クリアーかつタイトに繰り出される重低音の迫力をベースにしたドルビーアトモス音響が圧巻だった。

映像もトレーラーでの高品位ぶりから想像できたように、これまた圧巻であった。「私がビーバーになる時」は、ピクタースタジオ製作のフルCGアニメーション作品であり、当然ながらすべてコンピューター上で計算して作られた映像なのであるが、画面内でフォーカス(いわゆるピント)があっている箇所と、あっていない箇所が極めてニュートラルな表現で描かれ、その驚異的な作り込みに唸った。

実写映画では、キャメラマンがレンズ選択と絞り設定、そしてフォーカス操作でこだわることで、映像内での重要な部分とそうでない部分の変化をフォーカスというカタチで描き分けて、自然と観客の視線誘導を行い、映画世界への没入を促し、ストーリーへの共感を誘うのが常套手段なのだが、それをコンピューター上でも恐ろしく高度に実現しているのが、近年の(よく出来た)CG映画の特徴だと思う。

本作でもその例に漏れず、実に緻密なフォーカス操演が行われているが、その意図を実にクリアーに、明確に描き出したのである。別の言葉で表現すれば、アウトフォーカスしている(=ピントがあっていない)部分の、映像ボケが感動的に美しかったのである。逆説的な言い方になるが、スクリーン映像のフォーカス感や解像感が足りないと、アウトフォーカスしている部分は、ただ甘い映像に見えてしまって、視線誘導がうまく機能せず、映画世界に没頭できない。

▼映像の素晴らしさと音響の迫力が相まって映画世界への強力かつ猛烈な没入を促す

T・ジョイ梅田のドルビーシネマを「私がビーバーになる時」を観た印象をまとめると、映像の素晴らしさが、音響の迫力と相まって、映画世界への心を開かせるトリガーになる原動力を持ったスクリーン、となる。

実は先ほどドルビーシネマのトレーラー部分の印象を長々述べたのは、映画本編のメモがほとんど残っていなかったと白状しておこう。これは映画を楽しめなかったからではなく、逆に映画世界にのめり込んでしまったためだ。ドルビーシネマでの「私がビーバーになる時」は3回目の鑑賞だったにも関わらず、面白かったという記憶は残ったが、具体的にどう思ったのかのメモがなく、詳述できないほどあっという間の体験だったのである。

座席は、後方にかけてかなりの勾配をつけて配置された「スタジアム・スタイル」
座席は、後方にかけてかなりの勾配をつけて配置された「スタジアム・スタイル」

▼近畿地方のドルビーシネマ3スクリーンを体験しての感想

前回、前々回から3回に渡って、近畿地方のドルビーシネマ3スクリーンを体験したが、その結論はどれもドルビーシネマに相応しい高い上映品質を備えていて、上質映画館として自信を持って推薦できる。

どこを選ぶかは、極論をいえば、各人の利便性を優先すればよい、という身も蓋もない結論になるが、あえていうのであれば、MOVIX京都はスコープサイズのスクリーンなので、シネスコ画角の映画を観る場合はベスト。逆にビスタ画角の映画なら、TOHOシネマズ ららぽーと門真か、T・ジョイ梅田がいいだろう。また車を利用して映画鑑賞とともに買い物をしたいのならTOHOシネマズ ららぽーと門真。電車などを使って映画鑑賞を第一の目的にするのであれば、T・ジョイ梅田がよさそうだ。ちなみに大阪在住の映画マニアの知人は、利便性とパフォーマンスの点を重視して、映画はできるだけ、T・ジョイ梅田のドルビーシネマで観ると決めている、とのことだ。納得である。

■採点
映像9.2/音声9.0/座席8.5/総合9.2
スタジアムスタイルの座席で非常に見やすいHDR映像が見事。入り組んだ地下街を抜けると、そこは映画の楽園だった。

今回の鑑賞料金
2,800円(大人料金2,200円+Dolby Cinema料金600円)

T・ジョイ梅田 ホームページ
https://tjoy.jp/t-joy_umeda

T・ジョイ梅田 施設案内
https://tjoy.jp/t-joy_umeda/facilities

T・ジョイ梅田 交通アクセス
https://tjoy.jp/t-joy_umeda/access

T・ジョイ梅田 シアター1ドルビーシネマのバーチャルツアー
https://my.matterport.com/show/?m=oqg4QDmNxg4

株式会社 ティ・ジョイ News Release 全シアターのデジタル化について
https://tjoy.co.jp/files/_up/corp_news/132581361210th_anniversary20100826.pdf

株式会社 ティ・ジョイ News Release ドルビーサラウンド7.1ch導入決定!
https://tjoy.co.jp/files/_up/corp_news/1325815794dolby7.1ch_releace20100709.pdf

株式会社 ティ・ジョイ News Release T・ジョイPRINCE品川、横浜ブルク13「IMAXデジタルシアター」公開ラインアップ決定!
https://tjoy.co.jp/files/_up/corp_news/146595248220160614_tue_release_imax2.pdf

映画.com T・ジョイ博多に日本初の「ドルビーシネマ」オープン! そのスペックは?
https://eiga.com/news/20181127/18/

ドルビーシネマ紹介/ JASジャーナル(日本オーディオ協会刊)2019年5月号
https://www.jas-audio.or.jp/journal-pdf/2019/09/201909_005-014.pdf

ドルビーシネマ Dolby Japanホームページ
https://www.dolbyjapan.com/dolby-cinema

筆者紹介

ツジキヨシのコラム

ツジキヨシ。1969年千葉生まれ。オーディオ専門誌の編集部を経て、オーディオビジュアル専門誌の編集に携わって四半世紀。大型スピーカーと100インチスクリーンによるドルビーアトモス対応サラウンドシステムを構築。日夜、映画と音楽に込められたクリエイターの想いを、いかに再生していくか、試行錯誤中。

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