コラム:細野真宏の試写室日記 - 第306回
2026年2月19日更新

映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。
また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。
更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)
試写室日記 第306回 木村拓哉主演「教場 Requiem」は新たな大作映画のビジネスモデルを作れるか?

(C)フジテレビジョン (C)長岡弘樹/小学館
今週末2月20日(金)から木村拓哉主演「教場 Requiem」が公開されます。
この作品は2023年の連ドラ「風間公親 教場0」から3年が経った段階でのリリースとなりましたが、当初からこの映画化は2部作になると想定されていました。
それは、そもそも初めて映像化された「教場」は、2020年1月4日、5日に2夜連続スペシャルドラマとして放送され、同じく「教場Ⅱ」は2021年1月3日、4日に放送されていました。

(C)フジテレビジョン (C)長岡弘樹/小学館
「教場」とは警察学校の「クラス」を意味していて、本シリーズでは、公にされない警察学校の内部を本格的に描き出しています。そして、新たなクラスを描き出すには、これまでのように「前編」「後編」のような2部作にする必要があるだろうと想定されていたからです。
実際に今回の「教場Ⅲ」にあたる本作では、前編「教場 Reunion」、後編「教場 Requiem」という劇場版2部作となりました。
ここまでは想定内で「既定路線」とも言える流れなのですが、完成後のリリース段階で新たな試みが生まれています。
それは、これまでの映画業界の手法では劇場版2部作は映画館で連続公開をしていくのですが、この手法だと、後編の興行収入は前編よりも下がってしまったり、前編の興行収入が振るわなければ後編も厳しくなったりとリスクが小さくないのです。
しかも、このような大掛かりな作品は制作費が高めになる場合が多いので、リスクヘッジも重要になります。

(C)フジテレビジョン (C)長岡弘樹/小学館
そういう観点から考えると、「前編」については、あえてプロモーション的な意味合いを持たせて、「後編」で思いっきり勝負をする、という選択肢も見えてきます。
これは、例えばテレビ局が幹事会社の映画では、映画の前日譚も同時に作っておいて「特別編」のような形で映画の公開に合わせて放送されるケースが多いのですが、まさにその応用版と言えます。
本作においては(制作費の高さもあってか)前編の「教場 Reunion」をNetflixの独占配信で1月1日から始めています。
本作は前編と後編を同時に作っているので、そのぶんセットなどを効率的に使えたりして制作費は抑えられるようになります。

(C)フジテレビジョン (C)長岡弘樹/小学館
ただ、それでも本作の制作費は、前編5億円、後編5億円という規模だと想定されます。
そしてNetflixサイドは独占先行配信の権利を得るために、前編の制作費5億円は負担すると思われます。
つまり、製作委員会サイドとしては、前編については既にリクープできているため、今後の放送などの2次利用で利益を出していく形となります。
このように前編を配信で「後編のプロモーション」として活用して、後編の劇場公開で勝負するという新たなビジネスモデルは、配信が大きく浸透している今だからこその手法でしょう。

(C)フジテレビジョン (C)長岡弘樹/小学館
そして、もちろんフジテレビは公開に合わせて、前編の「教場 Reunion」を2月14日に「地上波初放送」しています。
これは、通常の連続公開だと不可能と言えるような手法なので、これを実現させる上でもNetflixの活用は大きな意味を持っているのです。
本作の仕掛けの面白さは内容の面からもあります。

(C)フジテレビジョン (C)長岡弘樹/小学館
それは、「教場」「教場Ⅱ」で巣立ったキャストが警察官になっているケースが多いため、「先輩」だったり「現場の警察官」として登場するなど、作品が進めば進むほどメンバーが豪華になっていくのです!
「教場」において日々提出される生徒の日記や、ふとした言動から、木村拓哉が演じる洞察力の鋭い教官・風間公親には「何が起こっているのか」が見通せるので、様々な思惑が交差する中での心理戦は面白く、中でも本作は、これまでのエピソードも詰まっていて“過去一見応えのある作品”に仕上がっています。

(C)フジテレビジョン (C)長岡弘樹/小学館
さて、「教場 Requiem」は制作費5億円、P&A費を2.5億円とすると、劇場公開だけでリクープするには興行収入19億円が必要になるので、まずは興行収入20億円が最初の関門になるでしょう。

ただ、キャストや制作陣の並々ならぬ気迫も感じるので興行収入30億円は突破したいところですが、果たしてどこまで伸びるのでしょうか?
この作品の成功具合によって今後の映画の制作手法に大きな影響を与えることになるので木村拓哉主演作が新たなビジネスモデルを構築するのか大いに注目したいです。
筆者紹介
細野真宏(ほその・まさひろ)。経済のニュースをわかりやすく解説した「経済のニュースがよくわかる本『日本経済編』」(小学館)が経済本で日本初のミリオンセラーとなり、ビジネス書のベストセラーランキングで「123週ベスト10入り」(日販調べ)を記録。
首相直轄の「社会保障国民会議」などの委員も務め、「『未納が増えると年金が破綻する』って誰が言った?」(扶桑社新書) はAmazon.co.jpの年間ベストセラーランキング新書部門1位を獲得。映画と興行収入の関係を解説した「『ONE PIECE』と『相棒』でわかる!細野真宏の世界一わかりやすい投資講座」(文春新書)など累計800万部突破。エンタメ業界に造詣も深く「年間300本以上の試写を見る」を10年以上続けている。
発売以来16年連続で完売を記録している『家計ノート2026』(小学館)が増量&バージョンアップし遂に発売! 2026年版では、日本において最も問題視されている「失われた30年」問題。この「失われた30年」においても貯金額を増やせる特別な方法を徹底解説!
Twitter:@masahi_hosono









