コラム:若林ゆり 舞台.com - 第135回
2026年8月7日更新

「キングダムII 継承」の稽古場で、信役の三浦宏規&高野洸を直撃!

撮影:若林ゆり
原泰久の大人気漫画を初めて舞台化し、2023年に帝国劇場で上演された舞台「キングダム」。戦争孤児の信(しん)と若き泰王・嬴政(えいせい)が出会い、王弟・成蟜(せいきょう)から玉座を奪還するまでを描いて大好評を博した舞台から3年。待望の第二章「キングダムII 継承」が幕を開ける。

撮影:若林ゆり
2006年に「週刊ヤングジャンプ」で連載を開始した原作は、アニメや実写映画シリーズにも展開され、熱狂的な支持を集めてきた。映画版は、2019年公開の第1作「キングダム」から、信の初陣を描く「キングダム2 遥かなる大地へ」、王騎が趙との戦いに挑む「キングダム 運命の炎」「キングダム 大将軍の帰還」、秦と六国が激しくぶつかり合う、現在公開中の「キングダム 魂の決戦」へと続いている。

撮影:若林ゆり
今回の舞台では、信が歩兵として初めて戦場に立つ蛇甘平原の戦いから、秦国の大将軍・王騎(おうき)が趙軍との決戦に挑む馬陽の戦いまでが描かれる。映画シリーズでいえば、第2作から第4作にまたがる物語を、一つの舞台作品として紡ぐことになる。
信役は、初演に続いて三浦宏規と高野洸のダブルキャスト。王騎役の山口祐一郎も続投。驚異的な剣技を持つ羌瘣役には、中国武術の経験をもち、映画版では羌象(きょうしょう)を演じた山本千尋が新たに加わる。熱気を帯びた稽古場で、2人の信に話を聞いた。

撮影:若林ゆり
まずは、映画版「キングダム」シリーズの印象から話してもらおう。
三浦「舞台で信という役を演じるにあたって、すごく刺激を受けました。映画はロケーションも含めて、映像の美しさや迫力が本当にすごいなと思いましたし、実際に我々がやるにあたって、舞台ではどうしても表現しきれないものがあるんです。どういうロケーションで、そこに何百人という人間がいて、という描写はできない。だから初演のときは映画を見て、『ああ、こういう景色なんだ』ということを自分の身に入れて、参考にした部分はすごく多かったです」
高野「映像の力を感じましたし、スケールが大きくてアクションもすごいので、圧倒されました。信役の山崎賢人さんはすごくアクションがうまい方で、気迫たっぷり。尊敬しますね」

撮影:若林ゆり
同じ信を演じる山﨑賢人を、ライバルとして意識することは?
三浦「いや、まったくそんなふうには思っていません。ただただ尊敬する先輩俳優です」
高野「僕も同じです!」
だが舞台には、映像の壮大な表現とはひと味違う、舞台でしか実現させられない豊かな表現と迫力が、確かに息づいている。それを感じさせる初演だった。
三浦「舞台にしかないところで明らかにいちばん大きいのは、生である、ライブであるというところですね。『キングダム』を好きな方、原作が好きという方やアニメが好きな方、映画を好きだという方も実際、劇場にいらしていただけたら、いままで二次元で見て好きだったものが三次元で、リアルに動いているというところに感動を覚えてくださる方はいらっしゃるのではないかと思います」
高野「舞台でしか表現できない見せ方、ちょっと抽象的にすることによって見え方が変わるというような部分もたくさんあると思いますけど、リアルな足音だったり、声だったり、本当に直接響くもの、聞こえてくるものが舞台にはあるので。そこはやはり舞台の魅力かなと思います。映画は映画として本当にすごかったですけどね。砂ぼこりとかがすご過ぎて、『撮影は大変なんだろうな』と思います(笑)」

撮影:若林ゆり
初演は大きな反響を呼んだ。続編となれば、前作を超えなければならないという闘いも生まれるのではないか。だが、2人の答えは意外なほど冷静だった。
三浦「作品の戦略は、我々が決めることではありませんから。我々がそこを考えてしまうと、すごく狭まってしまうような気がしているんです。だから、あまり前作へのプレッシャーを感じたということはないですね。ただ舞台って、絶対に再演をやった方が楽だし、効率がいいんですよ。採算的にも。その作品がよくできていたんだったら、それをまた見たいと思うお客さんも当然たくさんいらっしゃるわけで、普通なら再演をやる方が多いですよね。でも、あえてそこで続編をやるんだという、プロデューサーの覚悟みたいなものがすごいな、かっこいいなと思います。舞台を1本作るのって、すごく大変な作業じゃないですか。当たり前ですけど。それでも、どうしても祐様(山口祐一郎)演じる王騎の最後を描きたい、やりたいという思いが強かったんだと思うんです。それは我々もぜひ見たいですからね(笑)」

撮影:若林ゆり
今作の大きな見どころとなるのが、“ミュージカル界の帝王”こと山口祐一郎が演じる王騎将軍の壮絶なる戦いと、信との絆だ。
高野「舞台としてはやはり祐様が王騎を演じているからこそ、という部分が大きいと思っています。このストーリーで祐様と一緒に立てている、信として一緒に立てているということもすごく幸せに感じるので、最後まで楽しみながらやっていきたいなと思います」
原作や映画でも絶大な存在感を放つ王騎だが、王騎のために兵士たちが士気を上げる劇中さながらに、山口の人柄が稽古場の空気を引き上げているそう。
三浦「祐様はとにかく、気遣いの人なんです。今回は絶対に、ご自分が大変だと思うんですよ。なのに、自分のためじゃなく、僕らに声をかけてくださったり、僕らのことを考えていろいろしてくださっていて。自分のことは二の次なんですよ。そういう、この方の居方が好きなんです。『この人は本当にすごいな』と思いますし、だから全員が、『この人のために気持ちを上げて戦おう!』という態勢になっている。役としてだけではなく、そう思えているんです」
高野「本当に、もう祐様は偉大すぎて。尊敬の気持ちがどんどん湧いてきますね。稽古場では入り口に近いところにいつも席があるので、稽古場に入ってきた人がまず祐様に挨拶をするんですけど、誰に対しても(ちょっと高めの大きな声で)『オハヨー!』って(笑)。明るく大きく挨拶を返してくださるので、そこからテンションが上がります」
筆者紹介
若林ゆり(わかばやし・ゆり)。映画ジャーナリスト。タランティーノとはマブダチ。「ブラピ」の通称を発明した張本人でもある。「BRUTUS」「GINZA」「ぴあ」等で執筆中。
Twitter:@qtyuriwaka









